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    kk_69848

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    2年後のW杯で、白石にほんのり片思いしてるモブ後輩視点の話
    ※付き合ってない蔵種前提

    嘘つきな先輩W杯予選リーグ初戦、俺は白石先輩とダブルスで出場することになった。
    なんでも2年前までは乱暴なおっさんが監督だったらしく、オーダーも直前に発表とか無茶なことをやっていたらしいけど。優勝して体制が変わったらしく、俺は合宿中からずっと白石先輩とダブルスを組ませてもらっていた。
    白石先輩は、優しい。時々言動がおかしいけれど、変人揃いの日本代表のメンバーの中では断トツで面倒見がいいし、しかもめちゃくちゃイケメン。2年前のW杯の後は、あちこちの芸能事務所からスカウトもされたらしい。
    もし俺がそんなことになったら、テニスやめて芸能人になっちゃうかもって思うけど。白石先輩は全部断って、今もストイックにテニスを続けている。そういう所もめちゃくちゃかっこいいし、憧れる。
    そんな白石先輩の足を引っ張る訳には、絶対にいかない。俺は念入りにストレッチをして、試合に備えた。
    「おい、○○!」
    「切原先輩!?」
    急に声を掛けられて、俺の身体はビクッと震えた。声の主は切原赤也。白石先輩とは正反対の、代表内でも断トツでヤバい奴。でも、白石先輩はこの切原とも上手くダブルスを組んだことがあるらしいから、本当にすごい。
    「今日白石さんとやるんだろ? 迷惑掛けるんじゃねーぞ」
    「はぁ」
    俺なんかよりお前の方がよっぽど迷惑掛けてるだろって思うけど、とても本人には言い返せない。何かあったら立海の人達に告げ口するのが得策だ。
    「ったく、俺が白石さんと組みたかったのによぉ」
    「切原先輩はシングルスで出るじゃないですか」
    「まーな。他に任せられる奴いねーし」
    よし、真田先輩あたりにチクろう。
    俺は適当に愛想笑いをすると、荷物を持って集合場所へと向かって歩き始めた。集合時間も近いけれど、切原先輩はまだまだ移動しそうになくて。何やらぶつぶつ言っている。
    「でも白石さんのダブルスって久し振りだよなぁ。種ヶ島先輩以来かも」
    「種ヶ島先輩?」
    「あっ、教えてもらってねーんだ!」
    切原先輩が意地の悪い顔で笑う。白石先輩がかつてキミ様─君島先輩とダブルスを組んだという話は何度も聞いたことがあるけれど、種ヶ島先輩というのは初耳だ。でも芸能人であるキミ様以外の、全然知らない先輩の話をされても分からないし、別におかしなことでもないと思うけれど。
    「その種ヶ島先輩って、どういう人なんですか?」
    「さーな。白石さんに聞けば?」
    そう言って切原は笑った。まるで、お前なんかに教えてもらえるはずがないって顔で。バーカ、お前と違って白石先輩は優しいんだよ。俺は集合場所で白石先輩を見付けて聞いた。
    「あの、種ヶ島先輩ってどういう人ですか?」
    「え? ○○クン、種ヶ島先輩知っとるん?」
    白石先輩は大阪のノリなのかなんなのか、心底驚いたという顔で俺を見た。
    「切原先輩に聞いたんですけど。種ヶ島先輩って人とダブルス組んだって」
    「あー、切原クンか。切原クンも種ヶ島先輩とダブルス組んどったもんなぁ」
    白石先輩はうんうんと頷いた。いちいちリアクションがデカいけれど、顔がいいのでそれも様になる。
    「どういう人なんですか?」
    「どうって、めっちゃ強かったで?」
    「他には?」
    「えーっと、忘れてしもたわ。2年も前の話やし」
    2年前の優勝した大会について、そうも簡単に忘れてしまうもんだろうかとは思ったけれど。白石先輩が忘れたと言うならそうなんだろう。白石先輩は「緊張ほぐしたろか? あっち向いてホイしよか」って絡んできて、ちょっとウザいなって思ったけれど。何でも完璧にこなす先輩と肩を並べてW杯に出られるのは、俺の誇りだ。
    その後大分遅れて切原先輩も集まると、俺達は会場に入った。W杯も本戦からはデカい会場でやるらしいんだけど、予選リーグはそこまででもないって感じで。これなら俺も緊張せずにやれそうだった。
    そしたら白石先輩が、客席に向かって指や顔を振ったりし始めて。あぁ、応援に来た人とまたあっち向いてホイでもしてるのかなって思ったんだけど。勝ったのか負けたのかは知らないけれど、一区切り付いたらしい白石先輩が。まるで太陽の光が白石先輩にだけ当たったかのように輝いて、ちょっと見たことのない顔で笑った。
    後ろで誰かが「あ、種ヶ島先輩」って言って、あぁこれがそのって、ひどく腑に落ちた。

    ─えーっと、忘れてしもたわ。
    「嘘つき」
    俺は遣り場のない感情を込めて、ラケットを強く握り締めた。
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