『団地』凛子と喧嘩してアジトを飛び出した私は、団地近くの公園で子供を見かけた。ブランコに座ったまま俯いて動かないその子を私は黙ってを見つめていた。揉み上げだけが長い髪型をしている。親らしき人は居らず、どうしてるのだろうと思い、私は声をかけていた。
「どうしたの?お母さんは?」
子供は顔を上げ私を見たがすぐにまた俯いてしまった。そして、小さな声で答えた。
「いない」
「えっ?」
その言葉の意味が理解できなかった。ただ、母親がいないと言うことだけは分かった。
「じゃあ、お父さんは?」
私がそう聞くと子供は首を横に振った。父親はいないらしい。
「なんで、お母さんがいないの?」
「・・・しらない」
「そっか、知らない・・・」
母親について質問しても何も答えてはくれなかった。
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