ぬくもりに寄り添う(ヒース+ファウスト) 〈大いなる厄災〉の襲来を翌日に控えた夜。
魔法舎内の自室で寝る準備をしていたファウストは、人の気配に眉を顰めた。
誰かが廊下を行ったり来たりしている。
向かいの部屋のムルやシャイロックではない。もっと控えめで、遠慮がちな気配だ。それが誰のものなのか察し、ファウストは少しの逡巡の後に扉を開けた。
「眠れないのか?」
声をかけると、気配の主――ヒースクリフがびくりと肩を震わせて動きを止めた。
いつもとやや雰囲気が違って見えるのは、普段は丁寧に整えられている髪が無造作に流れているからだろうか。服装もラフなもので、寝る準備は万端らしい。とはいえ、強ばった表情からは眠気はまったく感じられないが。
「明日は戦いになる。きみは初陣だろう。早く休んで、魔力と体力を養いなさい」
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