君の世界『第5層』 落ちた先は、闇だった。
真っ暗闇、ではない。両手を広げ、仰向けになった時に見えた視界は、黒と血の色を混ぜた赤が渦巻いていた。何処かで見た景色だ。
その場から身体を起こしゆっくりと立ち上がると、べちゃ、と何かが地面に落ちた。
視線をそちらに向ける。すると、自分の背に粘ついた黒いものがへばりついていたらしく、辺り一面にそれらが地面に広がっていた。べたべたとした泥、と言えば良いのか。それは浅い沼のように、何もない空間に地平線まで広がっている。
「何だこれは、瘴気……? 酷い臭いだ」
つんとした感覚がする臭いがする。視界は薄い霧がかかっていて、それの臭いだろう。魔王山のものともまた違うが、少なくとも良い匂いとはとても言えない。
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