唇を重ねながら、高坂は優しく雑渡を蒲団へ押し倒した。
緊張で心臓が口から飛び出そうだが、それを必死に抑える。あまり格好悪いところを見せたくはなくて、脳内で落ち着け高坂陣内左衛門と何度も唱える。
想いを受け入れてもらい、そして彼からも想いを返してもらえた。それは天にも昇るような幸福だったが、それで終わりではない。高坂はずっと望んでいたのだ。この方と、身も心も繋がりたいと。
そして今日がその初めての日であり、何度も脳内で復習した事を必死に思い出そうとする。だが、目の前の彼を前にすると何もかもが吹っ飛んでしまう。
それでも高坂は唇を離すと、緊張で震えそうになる指を何とか押し留めながら彼の寝巻の腰紐に触れた。
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