お弁当と恋心 「あれ、モラン先輩今日はコンビニ飯じゃないんですね」
机の上に広げた弁当箱を見て、隣の席に座る後輩─ルカ─がオレに声をかける。
「そうなんだよ〜コンビニ飯じゃ栄養が偏るからってわざわざ作って持たさせてくれたんだ」
「へー……それ作ったのって、もしかして彼女さんですか?」
「え?違う違う、彼女じゃなくて親友のお母さん。オレの事昔から知っててさ、最近忙しくてゆっくりご飯も食べてる時間ないんだ〜ってボヤいてたら、親友の分と一緒にオレのまで作ってくれたんだよ」
「そうなんですか」
「うん」
我ながら、よくもまぁスラスラとこんな嘘が言えたものだなと思った。親友の、というところまでは本当。そこは嘘じゃない。だけど、実際は彼の母親ではなく彼の兄─ユアムさん─がこの弁当を作って持たせてくれたのだ。ルカは仲のいい後輩だし、別に本当の事を言ってもよかったのだけれど、ルカもよく知るあの人と自分の話をするのは少し恥ずかしかった。それは多分、自分があの人に好意を抱いてしまっているからだと思う。
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