裁きの時はなく ●
立場としてはUGNであり、正義の名のもとに殺しをしている。
ゆえに、標的がジャームであることは別に珍しくはない。
――最早、人の言葉すら失った怪物が廃ビルの天辺で吼える。
『キュマイラ』シンドロームの名の通り、様々な生き物を継ぎ接ぎしたような風貌。厚い鱗は鎧となり、二対に増えた四本腕には巨大な鉤爪、下半身は百足の如く、頭部は蜻蛉の目玉に獅子の顎。
もう暗殺者じゃなくて怪物狩りだな。
そんな自嘲をしながら、十三は瓦礫の中より身を起こした。奴の爪に切り裂かれ、尾に吹っ飛ばされて壁にぶつけられてこのザマだ。ボロボロになったスーツに血がにじんでいる。痛いが、痛みで苦しんで隙を晒さぬよう調教済だ。ぺ、と血唾を吐いた。
1883