ユーフォリア深夜 ●
眠れない。
ベッドに入ってから、かれこれ一時間は経過したと思う。
今夜はもう眠れない気がする。これ以上ベッドでうだうだしていても無駄な気がする。ので、十三はいっそと起き上がることにした。
黒い、ラフなジャージ姿で夜を歩く。ネオン。車。オレンジ色の街灯。飲み屋とラブホテル。近くの川のドブ臭い匂い。高架下に所狭しと落書き。この辺りはお世辞にも清楚とは言えない地区だった。ふしだらと不道徳、欲望と衝動。天使に拾われてからずっとこの街に居るから、十三にとってここはもはや地元であった。
「おにーさん、どーですか?」――客引きの若い男の声を聞き流して、白と黒の横断歩道。無事に渡り終えたら、いつも利用するコンビニに入る。お菓子コーナーへ。同じラムネを複数と、硬い食感のグミと。それから飲み物コーナーで甘ったるいコーヒー牛乳。レジへ赴く。もう顔馴染の店員(日本人ではない)の、カタコトの「レジ袋ハゴリヨデスカ」に『お願いします』を、「ポイントカードゴザマスカ」に『いえ』を、ポケットのスマホの読み上げアプリ音声で返す。
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