ただしたがりのロンド*
「お高くとまりやがって、この姫気取りが……ッ」
捨て台詞と共に向けてしまったその背を、私はぽかんと見送った。この手の暴言にもはや慣れてしまっているというのもあるが、先ほどまでは大層にこやかに対応されていたので、その手のひら返しに呆れることすら出来なかったからだ。
同じマトリといえど、異例の入庁者を九段下の職員すべてが等しく認めている訳ではない。先の男性のような態度など珍しくなかった。ため息をひとつだけ吐くに留め、当初の目的だったオフィスの自販機コーナーへと足を進める。
「分かりやすくて、いっそ感心するなあ……」
それでも多少のストレスはついて回る。こちらも分かりやすい甘さが欲しくて、いつものカフェオレでなくココアのボタンに指を添わせたところで。
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