ハンドクリームとソウキサハンドクリームを出しすぎてしまった。
すぐ横で台本と向き合っている創ちゃんにちらりと視線を移し、手元のハンドクリームに戻す。
「創ちゃん、ハンドクリーム出しすぎたからあげる。手貸して。」
返事を待たず創ちゃんの手持ち無沙汰になっていた左手をとり、馴染ませるように両手でハンドクリームを塗る。
(創ちゃんの手、やっぱり大きいな)
幼い頃繋いでいた手とは違う、男の人の手。
気づくと当初の目的を忘れ、自分の手と比べるように触れていた。
視界の端に捉えていた創ちゃんは最初呆気にとられていたようだったけど、次第に少し赤くなり、今は必死に言葉を探しているようだった。
いたずら心が湧いてくる。
左手を合わせてするりと指と指を絡ませたところで創ちゃん身体がぴくりと震え、指に少し力がこもる。
「き、希佐ちゃん」
「ごめん、嫌だった?」
「嫌じゃない、けど」
バツが悪そうに視線を逸らされる。歯切れの悪い言葉はどうすればいいのか迷っているようだ。
(創ちゃんはいつも私の様子を伺うように、気遣うように触れてくれる。)
創ちゃんはいつも優しい。
それと同時に何かを押し殺しているようで、創ちゃんの本当の欲に触れたくなる。
「創ちゃんはここからどうしたい?」
誘うように私も絡めた指の力を強める。
「どうって」
逸らしていた目線がこちらに向く。
少し長い前髪から覗く瞳は熱を帯びていた。