【クージィ】エーデルワイス父の店で、花を買った。息子が買い物に来たのは初めてであるアズゴアは一瞬戸惑い、それから何かを悟ったように優しく微笑んだ。
イエローの花柱に、白く尖った花弁をつけた名も知らない花。闇の世界で彼女がつけている、腕の装飾に似ている。だからそれを選んだ。
「これの花言葉は『初恋の感動』だそうだよ」
父の、さりげない言葉が胸に溜まる。初恋の感動。雪のように白い花は丁寧にラッピングを施され、クリスの手に渡った。飾るリボンは、艶のあるスミレ色を選んだ。
「なんだよ、急に呼び出しやがって」
誰も開けたことがない扉が眠る森の中で、彼女は待ち合わせの時間ぴったりに立っていた。
ゲームをしようとか、闇の世界に行こうとか、ダイナーに行こうとか、様々な理由で呼び出しては、彼女は律儀にやってくる。その日もいつものようにだぼだぼのジーンズを履いて、見慣れた白いシャツと着古したジャケットを着て、クリスがやってきたのを見るとほんの少しだけ頬を緩ませた。
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