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    what if のさらに what if

    かわいくなあれ(仮)ニュータイプ能力に定義はまだなく、これからの調査研究によって明らかになっていくはずだった。
    だがその能力の特性によって定義が難しくなっていることが次第に明らかになる。
    ニュータイプ能力とは現実改変能力であり、発揮された地点を中心に現実を書き換える。それは人類が進出した天体距離に応じた規模の改変を起こすが、遠方に位置する事物には影響が小さく、改変前の事物や記憶がまだらに残る。
    木星船団の帰還者が適応障害を起こす原因のひとつにこれが影響しているなど、シャリアとシャアの事例を見るまで誰も考えもしなかった。コロニーで生まれた少数のニュータイプ能力者が地球圏で現実を改変し、その影響の少なかった木星帰りの人々は過酷な労働環境に加えて改変された現実を受け入れられずにダウンする。
    ところが木星船団を率いたシャリア自身が現実改変能力と深い共感力を持っていたため、帰還途中で現れる改変の影響からクルーたちのメンタルを守り、現実の再改変で整合性を取り戻し、結果として驚異的な離脱率の低さで帰還を果たしたのだった。
    具体的に言えばシャリアは出発時点では年の割に老けて見られる灰色の髪の男で、その落ち着いたたたずまいと思慮深い性質でクルーたちの信頼を得ていたが、木星での資源採掘を終えて帰途に就いてから、奇妙な変化が起こり始めた。毎朝、鏡を見るたびに、自分の顔が若返っていく。クルーたちもシャリアの顔を見て奇妙な反応をする。
    「こんなことを言って失礼にあたるのは承知していますが、日々あなたのお顔が愛らしくみえてきて、今日などは狂おしいほどキスしたい、とうとう私はおかしくなったのかもしれません」という深刻かつ熱烈な相談が複数同時に寄せられるにいたっては、何か妙なことが起きていると判断せざるを得なかった。
    「自分の顔が変化している自覚はあるが、それをもってきみとキスしてよいという判断はできない。私の顔は最初からこうであったと思ってもらうほかはなく、この変化をともに受け入れて残りの航海を乗り切りたい。なお、キスの相手が帰国後に見つかるよう祈ります」という趣旨の返答をそれぞれに伝えてから、シャリアは考え込んだ。以前の顔に不満があったわけではないが、二十歳そこそこのクルーから父親のような接し方をされるのは閉口していた。顔が若返ると彼らの態度はかなり打ち解けたものになり、距離が近づくかわりに舐められることも増えた。まるでどこかの若者がシャリアにくみしやすくするために見た目を書き換えたようだと思ったが、あまりにとっぴな思いつきですぐに忘れた。
    思い出したのは帰還後ギレン総帥の命を受けてグラナダに赴き、ソドン艦橋で上官となるシャアに対面したときだった。周囲の人々の感情に敏感なシャリアだったが、このときのシャアの心理は独特だった。
    「洞察力があり率直でハイスペック、しかも並ぶと親子に見えそうな見た目の重々しさはなくなって、連れて歩くのに悪くない、私はよいかたわれをみつけた」というような感想がながれこんできた。まるで重々しい見た目が以前はあったような言いようで、それはシャリアの記憶に一致していた。では、このお方が私をかたわれにと望み、くみしやすく連れ立ちやすい年近い見た目に変化させたということだろうか。なんと身勝手なとあきれるとともに、ただ察しがよいだけの自分をそうまでして手元に置きたいという熱烈さはどこから来たのかというとまどい、そもそも骨格や生まれつきの髪色を変えてしまうほどの現実改変は人間に可能なのかというところに戻る。自分の勘の良さは、本当にただの勘のよさなのだろうか。強い意志があり、それに合わせて現実を引き寄せたというだけではないのか。たとえばたった24歳で後ろ盾のない自分が木星船団を率いることになったときのように。
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