はんぶんこ 鬼太郎に、今日はひとりで寝てみたい、と告げられた。
ああ、もうそんな歳になるのか、と水木は思った。
両腕がくたびれるまで抱いて揺すって寝かしつけていた日々は遠い。夜中に目が覚めて火の付いたように泣き出されることもなければ、最後におねしょをされた日のこともよく思い出せない。墓場で水木が取り上げたその日から、鬼太郎は確実に大きく育っていた。
一抹の淋しさが水木の胸の内を吹き抜けていったが、水木は「そうか」と受け止めた。子の成長を親が喜べなくてどうする。
意外だったのは、ゲゲ郎もうんうんと頷くのみであったこと。いやじゃいやじゃ、一緒に寝てくれ、と泣きわめき、愛息子にすがりつくかと思ったのだが。子離れする心算はできていたらしい。
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