白亜の祈りぽん、ぽんと昼の空に響く花火の音に、遊んでいた幼い子供たちが手を止めて空を見上げた。雲は厚かったが、僅かばかりの隙間から陽の光が差し込んでいる。雲の輪郭が金色に縁取られ、街の中心にそびえ立つ城に降り注いでいた。子どもの一人が母親を振り仰ぐと、母親は笑みを見せる。
「今日は任命式なのよ」
「にんめいしき?」
「そう、大神官様のね」
「だいしんかん」
子どもは母親の言葉を繰り返す。
「この国を魔族から護る、魔法兵団を束ねるお方よ」
へえ、と子どもは視線を城に移した。あの城の中で、国を、自分たちを魔族から護ってくれる大神官が任命される。正確には大神官の一つ手前の役職である大神官補佐の任命式なのだが、市井の者たちにはどちらも大差はない事だった。
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