その痣、愛と呼ぶ久々に伏黒と連休が被った乙骨。その日は2人で過ごすと約束し一緒に外出したりご飯食べたり、夜は濃密な交わりを交わし満足した1日目。2日目を伏黒の部屋でのんびりと過ごしていた。あっという間に連休の終わる夜。
先に風呂に入った乙骨は全裸にタオルを巻いて部屋に戻るとせっかくの連休だし今日もやらない?と伏黒を誘う。一言返事でいいですよと優しく微笑む伏黒は風呂入ってくるんで服着てベッドで待っててくださいと言い、入れ替わり風呂へ急ぐ。
珍しく自分から誘ってきた先輩を待たせるわけにはいかないとさっと体を洗い流すと早々に風呂からあがる。部屋の奥にあるベッドには先程と同じ格好のままの乙骨がクッションを抱いて寝そべっている。
「先輩、服着なかったんですか?風邪ひきますよ」
下腹部にタオルを巻いているだけのほぼ全裸の姿。この季節部屋も暖かくなってきたとはいえ夜はまだ冷えることもある。少し恥ずかしそうに起き上がる乙骨はどうせすぐ脱ぐからと持っていたクッションをキュッと握りしめる。あまり日焼けしていない健康的な肌色が少しばかり桃色に染まる、意地らしい姿に欲を掻き立てられてしまう。
「そうですね。早速始めましょうか」
そう言って後ろを向き着ていた下着を脱ぐ伏黒をぼんやりと見つめる乙骨。風呂あがりの火照った体には少しばかり汗が纏わり付いていて見惚れてしまう。…が、いつもと違う背中に乙骨は目を見開く。
背中には何かに引っ掻かれたような線傷が白い肌に赤く色づいている。左右の肩甲骨辺りからまるで羽根のように広がる5本の傷がふたつ。乙骨はそれに覚えがあった。
「伏黒くん?!背中の爪痕…昨日僕がつけたやつだよね…?まだ赤いよ、痛かったでしょう?なんで言ってくれなかったの!?」
そう、昨日の行為で気持ち良くしたもらった乙骨が無意識に伏黒の背中を引っ掻いた痕だ。1日経っても綺麗に残る痕にさぞかし痛かっただろうと謝る乙骨は立ち上がりその背中に反転術式を施そうとするも。
伏黒は乙骨の指に自らを指を絡めるとそのまま押して後退りさせ乙骨をベッドへ倒す。
「なんで治そうとするんですか?確かに昨日はシャワー浴びる時ヒリヒリしてましたけど今は何もないですよ。それに…」
伏黒は顔を一気に乙骨の耳元へ近づけると囁くように呟く。
「これは先輩が俺を愛してくれた痕でしょう?消させませんよ」
耳に息を吹きかけられるように離されてビクリと体が反応してしまう乙骨。それと同時に下腹部が疼く。
「で、でも結構大きいし目立ってるよ…皆に気づかれちゃったらどうするの…?」
「その時はちゃんと言いますよ。先輩の愛情の痕だって。それでいいじゃないですか」
「よくないよ!!行為してるなんてバレたら恥ずかしいじゃないか!!治させてよ!」
バタバタと抵抗するも倒れた状態で両手はすでに伏黒に捕らえられてしまっているからかうまく力が入らない。伏黒が額にキスをすると力が抜けて顔が一気に熱くなる。
「……先輩だって俺がつけた痕消したがらないじゃないですか。お互い様でしょう」
意地悪そうに話す伏黒に意表を突かれた乙骨はシュンと黙って顔を背けてしまう。
「そ、それは…だって小さいし、そんなに目立たないから……」
顔を真っ赤にしてしどろもどろに話す乙骨に的を得た伏黒ニヤリと腹黒く笑う。
「そうですか、なら今日はもっと大胆に攻めます。覚悟してくださいね」
「いや、それはちょっと…んむぅっ!?」
反論は言わせないとばかりに深い接吻を交わす。驚いて閉じてしまった唇に強引に舌をねじ込むとすんなりと扉は開かれ受け入れられる。生暖かい口内に己の液を絡めるとわざと大きな音を立てて乙骨の欲煽る。それに応えるように差し出す舌をぢゅっと吸い込み絡ませ熱を共有する。しばらく口内を堪能しようやく解放すると名残惜しそうにお互いの舌を繋ぎ止める愛が混ざり合った透明の系。しかし距離を離せばすぐに切れてしまう。
肩で呼吸をする乙骨はすでに蕩けるような表情をし、力ない瞳で伏黒を見つめる。
「いいですよね?激しくしても」
明日から先輩はまたいつもの任務に追われるのだろう。だから本当はあんまり疲れさせたくない。でも。
「うん。いいよ…おいで」
乙骨は解放されたばかりの両手を伏黒の背に絡めると引き寄せてキスをする。欲望のままに求められてしまったらもう伏黒の理性も本能に逆らえない。
明日、どうなっても知りませんよ。先輩が誘ったんですからね。
深い夜に落ちていく2人だった。