「はぁぁ………。守沢先輩とこんな狭い所で二人っきりって最悪……鬱だ……」
「まぁまぁそう言うな高峯!こういうのも冒険!って感じでワクワクしないかっ!?」
「はしゃいでる場合か」
こんな状況なのに何故かテンションの高い守沢先輩を横目に俺は特大のため息をこぼす。本当にどうしてこんなことになっちゃったんだっけ……?
俺と守沢先輩は今日一日、朝からバラエティのロケをしていた。ロケ自体は『山登りをして山頂の絶景を見よう!』というありきたりな企画であったものの、逆に言えば使い古されたネタだからこそ積み重ねてきたノウハウがあり事故なんて起こらない……はずだった。
俺と守沢先輩、数人のスタッフさん、ガイドさんたちと雪山を登っていく。序盤で体力が早くも尽きてきてあまり喋らなくなった俺とは対称的に、守沢先輩はあのテンションの高さをキープしたまま喋り続けていたので、守沢先輩が喋ってくれるなら俺は楽してもいいかな……なんて考えながら地道に登っていれば山の中腹あたりまで来たらしい。思い返せばこの辺りから既に雲行きは怪しかったような気がする。
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