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    天城志輝

    @shiki20xx

    地雷あるやつが死んでも知らねぇ字書き。
    やっとぬカニくんの小説を書きはじめた。

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    天城志輝

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    玖エイSSと、通販のお知らせです。
    新刊のメイド喫茶玖エイと繋がっておりますが、適当に流し読みできます。ギャグでいくと決めてからボツにした部分を整えた感じ。

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    ★新刊、既刊ともにBOOTHにて通販受付中です!※匿名配送も選択可。
     順次発送していってます。よろしければご利用くださいませ。

    #玖エイ
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    #ぬカニ
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    #NUカーニバル
    nuCarnival

    雨天はにーまじかるメイドカフェ





     ふわふわ。ゆらゆら。
     目の前でゆっくりと左右に揺れている玖夜の尻尾を眺めながら、エイトははあと息をついた。きょうは朝から雨が降っている影響で、メイド喫茶の客足が悪い。町のほうへ買い出しに行ったココとブレイドもなかなか戻らないし、エイトは暇を持て余していた。
    「玖夜ー、退屈だししりとりでもするか? はい、じゃあ、しりとりの『り』から――」
    「リボン」
    「勝手に始めて、勝手に終わるな!」
    「エイトさんこそ、僕はなにも言っていないのに勝手に始めないでください」
     窓辺に寄りかかっていた玖夜が呆れたように言いながらエイトを振り返る。
    「しかし、退屈には同意ですね。これだけ暇だとエイトさんがドジをして僕を楽しませてくれることもないですし」
    「お前を楽しませるためにドジを踏んでるわけじゃないけど……それに、お前が邪魔するから俺が失敗するんだろ」
     手に取ろうとしたトレーが急に顔面目掛けて飛んできたり、オムライスにケチャップで絵を描こうとしたら容器が破裂してケチャップまみれになったり、あんなの玖夜の意地悪以外に考えられない。ただ、エイトのスカートの中に手を突っ込んできた迷惑な客の頭上に、天井から吊るしてあった観葉植物が落っこちたのだけはきっと助けてくれたのだろうと感謝していた。
    「ま、玖夜がいまだに飽きて家に帰ってないってだけでも苦労した甲斐が――…んん? いやいや、お前がいるせいで俺が苦労してるわけだから、早く飽きて帰ってもらったほうがよかったのか?」
    「そんなことを僕に聞かないでください。親愛なる大魔法使いがお困りだと聞きつけて、心尽くしで手伝いに来たというのに……それに、僕はえーちゃむさんよりもずっと稼いでいますよ」
    「そ、それを言われると立つ瀬ないな……」
     別に、メイドごとに競うようなことをしているわけではないが、きゅんきゅんによる売り上げへの影響は桁違いであった。彼目当てのリピーターも多い。お出かけになったと思ったら、すぐに新たな金を握り締めてご帰宅になるご主人様を何人か見た。確かに、資金繰りのことを考えると稼ぎ頭のきゅんきゅんに今いなくなられては困る。ココのためにも、エイトはもうしばらく我慢するしかなさそうだ。
    「でもさ、玖夜。無理してないか?」
     エイトがそう問い掛けると、玖夜はわずかに間を置いてから微笑した。
    「まったくひどいですねえ、エイトさんはそんなに僕を追い返したいのですか。傷付きます」
    「そうじゃないって! お前がいてくれてすっごい助かってるよ。でも、なんか玖夜らしくないなって考えだしたら気になっちゃって」
     最初はただただ驚いたし、疑っていたが、今となっては心配にもなっている。絶対好き好んでメイドをやっているわけではないだろうし、そうかと言ってなにか魂胆がありそうでもない。玖夜のこんな態度は見たことがなく、なんだか恐ろしいような、気がかりなような、複雑な心境だ。
     探るようにじっと見つめていると、玖夜はエイトから視線をはずしながら言った。
    「では、逆に伺いますが、エイトさんはどうしてあの妖熊にここまで肩入れなさるのですか?」
    「え、俺? 俺は、前にも手伝ってたからこの店に愛着がわいたっていうのが大きいけど……うーん、あらためて言葉にするのは難しいな。もちろん、ココはいい子だと思うよ。でもそれだけじゃなくてさ、王都のメイド喫茶で仕事する人間を見てカッコイイと思ったって言ってたんだ。自分もなってみたかったんだって。それでこんなトコにこんな店まで自分で開いちゃうなんて、それこそカッコイイし、なんか嬉しいじゃん」
     人間の仕事に憧れを抱いたココ。きっと人間からも妖獣からも心無いことを言われることだってあっただろう。実際、いまだに嫌がらせもされている。それでも諦めず、誰のことも嫌わずに明るく努めてきた彼女の店には、妖獣も人間も魔法を求めてやって来る。それがエイトにはとても素敵なことに思えたのだ。
    「まだまだ小さいけどさ、大切にしたいんだよ。こういう場所を」
     それがまさかメイド喫茶だなんてなんとも奇妙な話ではあるが、人間も妖獣も、こうして少しずつ混じり合っていけたらいい。
    (こんなこと言うと、玖夜はまた馬鹿にしてくるんだろうけど……)
    「本当に、小さすぎて気が遠くなるようなお話ですね」
     思った通り玖夜は呆れていたが、それと同時にどこか楽しげでもあった。こちらに向いた色違いの双眸は、エイトを通してどこか遠くを見定めようとしているかのようだ。
    「取るに足らない話ではありますが……僕は、暇つぶしくらいにはなると思っていますよ。そうでなければ、あの子に僕の貴重なコレクションを貸したりなどしません」
    「幻影の宝箱と、妖獣化の巻物な……」
    「ええ、そうです。もちろん、最初はどんな派手な失敗をして僕を楽しませてくれるのかと期待していたのですが」
     玖夜はそこで一度言葉を切ると、エイトの顔を見て意味ありげに目を細めた。
    「まったく、バカな子ほど予想外なことをしてくれるものです」
    「それってココだけじゃなくて俺も入ってないか?」
    「さあ、どうでしょうね」
     そう言ってまたそっぽを向いてしまった玖夜の顔に光が差す。いつの間にか雨が上がり、雲のすき間から太陽が顔を覗かせていた。
    「お、晴れてきた。今から夕方まではお客さん来てくれるかも」
     午前中の分もしっかり稼ぐぞ! とエイトが気合いを入れ直していると、ちょうどココとブレイドも帰ってきた。力持ちの二人らしく食材を木箱ごと担いで入ってくる。
    「玖夜さま、ただいま戻りました!」
     どちらが店主なのやら。相変わらず平社員よろしく玖夜に挨拶するココを見て、社畜根性ってなかなか抜けないよなとエイトは自分までなんだかつらくなった。
    「はい、おかえりなさい。えーちゃむさんは掃除もせずに僕としりとりしていましたよ」
    「はあ!? なんで言いつけるんだよ。ていうか、しりとりはお前がソッコー終わらせただろ!」
    「えーちゃむ! いまからお掃除するガオ~!」
    「なんで俺だけ!? そこでずっとのんびりしてるきゅんきゅんにもちゃんとやらせろよ!」
     一気にうるさくなったエイトとココを、「ケンカしないでー」とブレイドがのんびりとした声で仲裁する。

     きょうも森の中のかわいいメイド喫茶は元気に営業中だ。










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