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    seaofjade

    @seaofjade

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    seaofjade

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    太刀村ウェーブに乗っかってセリフ募集したよその3。お題セリフ「尊敬してます」で太刀村短編。太刀村の鋼くんは幼女だと思ってる節がある…。

    人の多い所では、噂話も多くなる。以前、荒船が狙撃手に転向した時もひどかった。今は荒船から真意を聞けたから気にする事はなくなったが、噂というものは尾びれ背びれがつくと、突拍子もない方向に向かうらしい
    「村上先輩って、太刀川さんと付き合ってるらしいよ」
    ソロランク戦のブース前で対戦相手を探していたオレの耳に、そんな噂話が漏れ聞こえてきた
    (そんなこと、ある訳ないのにな)
    ありえない噂に苦笑いでもしたくなる。オレが太刀川さんを慕っていることは間違いないが、どうしてそんなことになったのだろう。まぁ、確かに最近ご飯をおごってもらうことは増えた気がするが。本部所属の太刀川さんとオレの接点といえばそのくらいだ
    「鋼じゃねーか」
    「太刀川さん」
    のそのそ、といった様子で太刀川さんが歩いてくる。噂の渦中の人が来てしまった
    「どうしたんですか?ちょっと疲れてますね」
    「あー、うん。大学のレポート終わんねーんだわ。集中切れちまったから息抜きに身体動かそうと思ってな。ってことで、相手になれよ鋼」
    ニカッと笑う太刀川さんに、オレでよければ、と返そうとした時、不意に噂話が耳に届いた

    「ってか、実際どうなん?太刀川ってめちゃくちゃバカなんだろ?」
    「いくら腕っ節が強くたってなぁ」
    「攻撃手ナンバーワンってのも、あの忍田本部長の弟子ってことで優遇されてんじゃねーの?」

    ………正直驚いた。このボーダーに、太刀川さんのことをそんなふうに言う人がいるのか。顔を向けてみれば、話をしていたのはC級。しかも、つい最近入隊したばかりの隊員のようだ
    「おーい、鋼?どうなんだよ。やらねーのか?」
    オレに聞こえるくらいなんだから、きっと聞こえているだろうに、まったく気にした様子のない太刀川さんに大人の余裕を感じる。そんな太刀川さんの顔を正面から見据えて答えた
    「………やります。やらせてください」
    「おっ、ノリいいじゃん。じゃあさっそくやろうか」
    ウキウキと向かおうとする太刀川さんの袖を掴んで引き止める
    「本気で、お願いします」
    目を見張った太刀川さんが、ニヤリと不敵に笑う
    「それはお前次第だな」

    ソロランク戦ブースから転送される。市街地、夜。孤月は右手に、レイガストは左手に。暗視効果の入った瞳で太刀川さんをまっすぐ見据える
    「………どうした、鋼。気合い入ってんな」
    「はい」
    これは護るための戦いだから。オレの全力で、太刀川さんの本気を引き出さないと
    「行きます」
    「来い」
    トン、トン、と軽く跳んで、太刀川さんに向かう。勢いをつけた孤月の一振りは、軽々と止められた。そのまま脳天から断ち切られそうになるのを、レイガストで受け止める。僅かに盾を傾け受け流すが、それくらいでバランスを崩す相手じゃない。孤月を握っていた手を離し、刀が落ちる前に逆手持ちに握り直す。太刀川さんの猛攻を逆手の刃で受け流しつつ、反撃の一手を探す。距離を開けたところで、レイガストをシールドモードからブレイドモードに
    「旋空弧月」
    オレの放った旋空弧月が防がれるのは想定内。その孤月の軌跡を追うようにスラスターで接近し、ブレイドモードのレイガストを振り下ろした。が、それも止められる
    「まだだな」
    「そうですね」
    それも分かっている。だから、少し荒業に踏み込んでみようと思う
    「おっ?」
    オレのレイガストを受け止める為に踏ん張っていた太刀川さんの太腿に足を乗せる。そのまま駆け上がるように太刀川さんの胸を蹴ってバク宙しながら、
    「旋空弧月!」
    「うおっ!」
    回転しながらのゼロ距離旋空弧月は、太刀川さんの身体を正面から引き裂くはずだった。でも、太刀川さんは、あの一瞬で、オレの旋空と全く同じ軌道の旋空と、オレの胴を真っ二つにする旋空を出してみせた
    【トリオン漏出過多、村上ベイ「スラスター!」ルアウト】
    胴が泣き別れになりながら、最後の足掻きにと、投げつけたレイガストすら、断ち切ってみせた

    「お疲れ」
    結局、10本勝負で1本も取れなかった。太刀川さんの本気を引き出せたかどうかすら、オレには分からない
    「………ありがとうございました」
    「おー」
    ここに来た時とは違い、スッキリしたような顔の太刀川さん。そしてそんな太刀川さんに向けられる驚きと賞賛の声

    「やっべ………なんだよあれ人間か………?」
    「相手、B級で攻撃手ナンバー4の村上だろ?そいつ相手に完封って………」
    「無理ゲーすぎんだろ………。俺らそもそもまだB級にすらなってねぇのに、B級やA級にはあんな化け物がゴロゴロしてんのか………?」

    所々で「曲芸」と呟かれているのは聞こえたが、その中に混じった困惑げな言葉に、目的は果たせたかと胸を撫で下ろす
    「鋼、お前さ………なんで受けたの?」
    「え?」
    そんなオレに太刀川さんが尋ねてきた
    「オレが本気出さねぇといけない程ってことは、お前は今何かを護ろうとしてたはずだ」
    お前が護りに入った時の強さはオレも認めてるからな、と。そう続けられ頬が火照る
    (本気を、出してくれてたのか)
    「で、何を護ってた?」
    太刀川さんが1歩近づく。身長差があるせいで少し影になった太刀川さんの目が、誤魔化すなと伝えてくる
    「………太刀川さんの強さを、伝えたくて」
    オレのSEを以てしても、到底追いつけないその強さを。曇った眼鏡で見てほしくなかった、から
    「尊敬してます、心から」
    オレの全力でも崩せない
    その強さを、誇りを………護りたくて
    「………………はー、お前ってやつは」
    「あ、でも護ったなんて、そんなことでは」
    オレが太刀川さんを護るなんておこがましいですし、そう続けた口が何かで塞がれる
    「………っ、っんん!?」
    目の前には、太刀川さんの顔、………顔っ!??く、口っ………!!?
    「っぷは!?な、な、たち、太刀川さん、なにをっ………!??」
    「え?キス」
    「なな、なんでっ!!」
    「かわいかったから」
    キャー!と、周りの女子隊員から黄色い悲鳴が上がり、いよいよ耐えきれなくなった
    「し、失礼しますっ!」
    「あ」
    全速力でその場を後にする。太刀川さんの強さを疑う噂はかき消せたけど、もうひとつの噂を消すにはどうすればいいんだろう。でも………それより今は、追ってくる太刀川さんを振り切る方法を考えないといけないみたいだ
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