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    seaofjade

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    seaofjade

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    個人ブログ時代に書いた鬼徹とゾロの話。アニワン1059話でちゃんと鬼徹を手に入れたシーンを描き下ろしてくれたスタッフさんに感謝して記念に上げます。

    妖しき刃 ゾロの持つ刀はどれも名刀だ。白鞘に美しい直刃を納めている大業物の一本、くいなの形見である和道一文字。黒漆太刀拵、刃は乱刃小丁字、良業物50工に名を連ねる雪走。どちらもそん所そこらの刀とは格が違う。しかし、この二振りとは異なる意味で有名な刀がある。───三代鬼徹。名だたる剣豪達を悲運の死に追いやる、いわゆる妖刀である。ただ、ゾロがその刀を何事もなく使いこなしていたため、ゾロの刀の一本が妖刀であるなんてにわかには信じられない話だったのだ。あの出来事が起こるまでは………

     
     最初の異変は空島だった
    「がっはっはっはっはっは!!」
    「ご機嫌だなウソップ。交渉はうまくいったのか?」
    目の前にある岩を鬼徹で斬ったゾロは、背に大量の『貝』を背負ったウソップを見て話しかける
    「そりゃーも~!!いっぱい手に入ったぜ『貝』っ!!」
    ウソップは上機嫌で手に入れた貝のうちの1つ、炎貝を取り出した
    「色々できるぞ!『ウソップ工場』フル回転だな!おいゾロ!!その刀『匂う刀』にしてやろうか?」
    「いいよ」
    「ナミの『天候棒』もより強力にできるな。おれのパチンコもスゴイ事に………。ぷぷぷ!」
    「………」
    暫し武器の改造のアイデアを模索していたウソップだったが、無言で刀を振るうゾロの様子に気づきそっと様子を窺う。
    (やっぱり………落ち込んでんのかな………。相手は『雷』だったんだから倒されちまってもしょうがねェ事なのにな………)
    今回の戦いで雷の効かないルフィは別として、エネルの雷を1番多く受けたのはゾロなのだ。エネルに握られた刀を通して1回、大技『雷獣』で完全に意識を失い、目覚めた後もジャイアントジャックを斬った直後に『万雷』の直撃を受けている。今回戦いが終わった時には一味全員ボロボロだったが、ゾロは特にひどかった。それでも今ゾロはいつものように刀を振るっている
    (チョッパーがいりゃあ慌てて止めるんだろうにな………)
    しかし周りにはゾロ以外誰もいない
    「ルフィ達は?ロビンは?」
    「ルフィ達はまだ中だ。ロビンはどっか行った」
    「………しかしよく寝てるなこのヘビは」
    「連日踊りっぱなしだったからな………。何がそんなに嬉しかったんだか………。何にせよ早く出て来ねェと目ェ覚ましたらまたエライ事になるぜ」
    「この気性のいいヘビが?」
    「バカ!知らねェんだお前はコイツの厄介さを!」
     カチ「この気性のいいヘビが?」
    「………だからお前はこのヘビの厄介さを実際見てねェからそんなのん気な………」
     カチ「この気性のいいヘビが?」
    「あのな、よく聞けよウソップ………」
     カチ「この気性のいいヘビ………」
    「『音貝』でした!!」
    「くだらねェ事すんな!!」
    (よっし!これでちょっとは元気出ただろ!)
    いつものように怒鳴り返してきたゾロを見てウソップはこっそりと安堵した。と、その時、
     ビシッ!!
    「「!?」」
    「なな、なんだっ!?敵襲かっ!?」
    「いや、違う………」
    ゾロはさっき斬った岩を見下ろしている。ウソップも近づいてみると、さっきは岩しか斬れていなかったのに、今はその下の石畳までもがザックリと斬れていた。あの音はどうやら石畳が斬れた音のようだ
    「うおっ!!すっげェ亀裂になってんじゃねェかっ!!力入れすぎだろこれっ!」
    「………………」
    アタフタするウソップの横で、ゾロは左手に握った鬼徹の刃から目を離さなかった

     チャキチキチキ………
     闇夜の中で途切れることのない鍔鳴りの音が響く。空島で不機嫌を露わにしたこの刀の怒りは、空に浮かぶ島から青海へと降りてきてもどうやら治まってはいないようだ
    「お前は一体………何に対してそんなにイラついてんだ?………鬼徹」
    ゾロは真っ黒に塗り潰された海を見つめながら腰に差している鬼徹の柄を撫でる。それでも鍔鳴りは収まらない
    「………ゾロ?」
     チャキ!
    「っ!………どうしたチョッパー?」
    ゾロを呼ぶ声が聞こえた途端、鞘から自ら飛び出そうとした鬼徹を押さえ、ゾロは振り向いた。そこには身体を少し震わせながらゾロを見上げてくるチョッパーの姿があった
    「ううん!べ、別に何でもねェんだけど………」
    そう言ってモジモジとするチョッパーはチラチラとゾロの刀を見ている
    「怖いか………?この刀が」
    ゾロは腰から鬼徹だけ鞘ごと抜き、チョッパーの目の前にしゃがんだ
    「う、うん………。ちょっと………」
    「まぁこいつは妖刀だからな。お前が怖がるのも無理ねェが………。ま、普段は気のいい奴なんだぜ?」
    「気のいい奴?」
    「今は何故か荒れてるみてェだがな」
    「荒れてる?………なぁゾロ、それって刀だよな?」
    「おう」
    「なのに何か………ゾロの言い方だとその刀が人みたいだぞ?」
    「あー、そうだな………。こいつの妖刀の気配がまるで人みてェなんだよ」
    「妖刀の気配………?」
    「あぁ。古い物や大切にされた物には魂が宿る、って言うだろ?こいつは多分それなんじゃねェか?」
    「魂かぁ………」
    医者であるチョッパーからすれば、にわかには信じられないような話である。それでも鬼徹からゾクッとする怖さを感じることは事実だし、ゾロがそう感じるならそうなんだろうと思った
    「悪かったなチョッパー。こいつのせいで起きちまったんだろ?」
    「ううん、平気だよ。おれもう寝るな!修行もほどほどにしろよ!」
    「ああ、分かってる。おやすみ」
    まだ起きて鍛錬するつもりのゾロに一言注意をしてチョッパーは男部屋へと戻っていった。しかし翌日、事態は急変する

    「ナミっ!!起きろナミっ!!」
    「うっさいわね………何なのもうっ!」
     翌日の明け方近く、ナミはゾロの何時になく慌てた様子の声に起こされた
    「なぁに?敵襲でもあったの………ってゾロ!?」
    女部屋の扉を押し上げ倉庫に顔を出したナミは、ゾロの姿に顔色が真っ青になる
    「アンタどうしたのよその怪我っ!?」
    ゾロの身体は全身刀傷だらけだった
    「掠り傷だ。それよりナミ、すぐに船を動かしてくれ!」
    「な、なんでよっ!?」
    「鬼徹が逃げた」
    「えっ………?」
    『鬼徹』というのはゾロの刀の中の一振りの名前だったはず………。そう思ってナミはゾロの腰を見た。そこには二振りの刀と紅い刀の鞘しかなかった

    「何だ何だ!?何で急に進路を変えたんだ?」
    「うわぁー!!い、医者ー!!」
     ログを無視して全速力で海を走るメリーにウソップが、そして身体中から血を流しながら進行方向を見続けるゾロを見たチョッパーがそれぞれ驚きの声を上げた
    「何だ?どうしたんだゾロ?」
    強制的に座らされチョッパーの治療を受けているゾロに、眠そうな目をこすりながら近づいたルフィが問う
    「すまねェ船長。少し寄り道する」
    「ん!別にいいぞ」
    「ルフィ!アンタはいっつもそれなんだから………。ちょっとは事情を把握する努力をしなさいよ!」
    「私がこの船に乗った時もそうだったものね」
    「ナっミさーん!!舵動かしてきたよー!!」
    そこにキッチンから舵取りをしていたサンジが合流した
    「さてゾロ?一体どういうことなのか話してもらいましょうか」
    ナミが仁王立ちで見下ろしてくるのに、ゾロはため息をついて経緯を話し始めた

     チョッパーが男部屋に戻って約1時間後、メリーの後方に海賊船が現れた。闇討ちを狙っているようで明かりもつけずにそろそろと近づいてくる。しかし闇に慣れたゾロの目にはハッキリとその姿が映っていた
    「ったく………せこい奴らだ。来るなら正面から来いってんだよ。まぁたいして強ェ奴もいなそうだし、他の奴らを起こすまでもねェか」
    ゾロが見張りを買って出て、仲間を起こすことなく敵を追い払うことは多々あることだった。今回もそうしようとゾロは近づいてきた敵船に飛び移る
    「な、なんだテメェはっ!!」
    「お前ら今すぐ引き返せ。そうすりゃ見逃してやる」
    ゾロは敵の海賊に一言忠告した。だが、ここで後に引くような連中だったら闇討ちなど狙ってこないわけで。当然の如く海賊達はゾロに襲いかかってきた
    「叩き潰して金目の物を奪い取れー!!」
    「「うおおおおっ!!」」
    「しょうがねェな………」
     カチカチ
    戦闘の気配に鬼徹が鍔鳴りを起こす。しかしゾロは一瞬迷った後、鬼徹以外の二振りを抜いた
    (今の鬼徹じゃあ見境なく斬っちまいそうだ)
    しかしその直後、鍔鳴りが一瞬止み、そしてゾロが触れてもいないのに鬼徹は鞘から飛び出した
    「なっ!?」
    鞘から勢いよく飛び出した鬼徹はカランカランと音を立てて敵船の甲板を転がっていく。そして狙ったように相手の海賊の船長らしき人物の前で止まった
    「なんだ?こ、りゃ………」
    自分の足元に転がってきた刀を見下ろした船長の目がどんどん虚ろになっていく。そして溢れだす鬼徹の妖気
    「それに触るなっ!!」
    虚ろな目のまま刀を拾い上げようとする男にゾロは叫んで飛びかかった
     ギィイイン!!
    しかし振り下ろした一撃は鬼徹を握った男に止められる。刀を腰に差しているところを見るとこの男も剣士のようだが、明らかに実力以上の力でゾロの刀を止めていた
    「ぐ、ひひひ………」
    「チッ!」
    狂気を孕んだ目で口元を歪ませていく男にゾロは舌打ちをした
    (魅入られたかっ………!)
    鬼徹に魅入られ、鬼徹の妖気に負けた者は鬼徹の操り人形と化す。その末路は………今にまで伝わる妖刀伝説が語っている
    「おい!鬼徹!!何のつもりだっ!?」
    鍔ぜり合ってゾロは鬼徹に問いかける。すると今まで虚ろだった男の目に意思が込められ、まるで鬼徹そのもののように語り始めた
    「おれはテメェに失望したんだ」
    「なん、だと!?」
    「今日限りでお前の刀はやめてやる。じゃあな」
    「ちょっと待て!!どういうことだ!?」
     ギィイン!!
    「っ………!」
    意味が分からずさらに詰め寄ろうとするゾロを刀を払って遠ざけた男、いや、男に乗り移った鬼徹は、メリー号に目を移しニヤリと笑った
    「別れついでにテメェの仲間でも斬っていくか」
    「なっ!?」
    立ち位置からすると鬼徹の方がメリーに近い。クルリとメリー号の方に向き直った鬼徹が刀を振り被ったのを見て、ゾロは駆け出す
     ビュン!
    「ぐっ!!」
    メリーに向かって放たれた飛ぶ斬撃をなんとか2本の刀で受けたゾロだったが、体勢の悪さもありその勢いを殺すことができず、メリーのキッチンの壁に叩きつけられた。その様子を見て鬼徹はチッ!と舌打ちをする
    「これ以上おれに情けねェ姿見せるんじゃねェよ!!」
    続けて怒濤の如く繰り出された斬撃を刀で、そして時には身体で受け、船と仲間を庇ったゾロが顔を上げた時には、鬼徹が乗った船は荒れ始めた海の遥か遠くまで進んでいた

    「つまりもう一本の刀はあの船の上、ということね?」
    「あぁ」
     ロビンが二振りの刀と鞘だけが残されたゾロの腰を見て問うのに頷いたゾロは、遠くに見える敵船を険しい顔で見つめた
    「収まる鞘のねェあいつは何をしでかすか分からねェ。一刻も早く取り戻さねェと………!」
    「それにしても何でその刀は急にそんなこと言いだしたのよ?」
    ようやく事情が呑み込めて少しは怒りが治まったナミが首を傾げる
    「おれにも分からねェが………、どうやらおれはあいつの信用を失ったらしい」
    「随分呑気だなクソ剣士。そんな調子であの刀を取り戻せんのか?」
    「問題ねェよ。信用がなくなったんならまた認めさせりゃあいいだけの話だ」
    「か、簡単に言うけどよ………ホントに大丈夫か?相手は妖刀だぞ?」
    「大丈夫だってウソップ!ゾロを信じろ!!」
    「でも無茶だけはすんなよっ!怪我しても知らないからなっ!」
    包帯を巻き終えたチョッパーがギュッと結び目を締めて言う。帽子ごとチョッパーの頭を撫でたゾロが立ち上がった時、メリーは敵船の間近まで距離を詰めていた
    「さて、行くか。」
    敵船からはゾロでなくとも分かるような異様な気配がたちこめている。一歩足を踏み出し、ふと立ち止まったゾロが仲間を振り返り言った
    「分かってるとは思うが、これはおれの問題だ。手出し無用で頼む」
    「分かってるって!絶対連れ戻してこいよゾロ!」
    「おう」
    ニカリと笑ったルフィにゾロも答え、軽い跳躍で敵船へと飛び移っていった

    (予想はしてたが………。ひでェなこりゃ………)
     敵船の甲板の上に飛び移ったゾロの足元は血で濡れている。そこここに転がる人の身体に、既に命はないだろう。その中で呆然と佇む男は一時的に鬼徹の憑依から逃れたようだ。ゆっくりと首を巡らし、仲間の血に染まった己の身体と鬼徹の刃に目を向けた
    「なん、だ………?おれが………やったの、か………?」
    「………」
    「う、嘘だっ!!おれじゃねェ!!こ、こいつのせいだっ!!この刀のっ………!!」
    「違う」
    ガタガタと震え、それでも刀を握った手を放せないでいる男にゾロはハッキリと言った
    「この惨状を作ったのはてめェだ。鬼徹がきっかけだとしても、己の狂気を抑えられなかったのはてめェの心の弱さ以外の何物でもねェだろ。責任転嫁もいい加減にしろ」
    (まぁ………鬼徹をこの船に乗せちまったおれにも責任はあるんだがな………)
    1つ息を吐き、ゾロは今度は鬼徹に対して語りかけた
    「鬼徹。お前はおれに失望したと言ったな」
    「………………」
    男の震えが次第に収まり、鬼徹が再び現れる
    「お前がおれの何に対して失望したかなんて聞くつもりはねェ。力ずくで認めさせてやるから覚悟しろ」
    「フン!馬鹿が………。いいさ、テメェはおれの手で殺してやるよ!!」
    腰の二刀を抜き、和道を突きつけたゾロがニヤリと笑った。挑発されて頭に血が上った鬼徹が襲いかかってくる。ゾロと鬼徹との戦いの火蓋が切って落とされた
     
    「どう思う?」
     ゾロが鬼徹と刃を交わし合うのを、クルー達はメリー号の上から黙って見ていた。敵船の上の悲惨な光景に表情を固くしながらも、ナミはそっとサンジに近寄り戦況を尋ねた
    「やっぱりクソ剣士の方が優勢ですね。………元が違う」
    三刀流が使えない今、ゾロとて全力で戦えない状態なのだが、鬼徹が操っているのはどこにでもいるような海賊の身体だ。鬼徹の力で強さが増幅されているとは言え、世界一の剣豪を目指し日々鍛錬し続けているゾロとの実力差は比べ物にならない。案の定、ゾロが鬼徹を追い込み膝をつかせた
    「もうよせ鬼徹。これ以上はそいつの身体がもたねェよ」
    鬼徹が乗り移っている男の身体は限界以上の酷使によってボロボロになっている。それでも鬼徹の怒りは未だに収まる気配を見せない
    「うるせェよ!!おれの支配にも抗えねェような雑魚のことなんかどうでもいい!!それよりおれが許せねェのはテメェだ!!」
    「………」
    「おれの………おれの持ち主ともあろう者が………あんな訳の分からねェ奴に負けてんじゃねェよっ!!!」
    激昂の叫びと共に鋭い突きがゾロに向かって繰り出される。鬼徹の感情を正面から受け止めたゾロは目を瞑ると、静かに刀を手放し左手を差し出した。
     ズブッ!!
    「「「………!!?」」」
    刃が肉を突き破る鈍い音がする。ゾロの左の手の甲からは、鬼徹の刀身の三分の一程が突き出ていた
    「な、にを………?」
    避けようと思えばゾロなら簡単に避けられる突きだった。しかしゾロは敢えてその身体で受けることを選んだ。そのことにメリーの上から見ていたクルー達だけでなく、鬼徹自身も驚いたようだった
    「お前は、おれがエネルに負けたことが気に食わなかったのか?」
    しかし再び目を開き、静かに問いかけてきたゾロに鬼徹の怒りが再燃する
    「そうだ!!おれの支配にも屈さねェテメェが!!なんで………なんであんな野郎に負けるんだっ!!!」
    「そうか………。お前は知らないんだよな」
    「………何をだ」
    「お前は、ローグタウンからおれの刀になったから知らねェのも当然だが………何もおれが負けたのはエネルが初めてじゃない」
    「!?」
    「鷹の目………それに今はもういねェ親友には数えきれねェくらい負けたことがある」
    「なっ!!」
    「鬼徹」
    そんなことは許さない、と過去に対してまで怒りの矛先を向けようとした鬼徹の言葉を遮ってゾロは言った
    「お前はおれの左腕だ。………確かにおれはまだまだ弱ェ。だがどんな敵だろうと、この命ある限りいずれ必ず越えてみせる。そのためにはお前がいなきゃ始まらねェんだよ!」
    鬼徹が目を見開いてゾロを凝視する。ゾロはさらに続けた
    「おれはお前を選んだが、おれを選んだのもお前だろう?つべこべ言ってねェでおれについて来い!」
    「っ………!」
    傲慢と思えるほどの笑みを浮かべたゾロに言い切られ、鬼徹は息を飲む。しかし鬼徹の顔に広がり始めたのもまた挑発的な笑みだった
    「言うじゃねェか………。そこまで言うんなら使われてやるぜ。ただし、おれを持つに相応しくねェと思ったら………また容赦なくテメェを見限ってやるからな」
    「望むところだ」
    ゾロが頷いたのを見届けると、鬼徹は男を解放した

     解放された途端に倒れ込んだ男の脈をゾロが測るが、その男は既に息絶えていた。暫くゾロは黙祷し、そして己の掌に突き刺さったままだった鬼徹を引き抜いた
    「終わったかゾロー?」
    「あぁ」
    ルフィが敵船に飛び移ってゾロの元に立つ
    「うわっ!痛そうだぞゾロ。」
    「痛っ!ちょ、触るなルフィ!!」
    「チョッパー!診てやってくれよ」
    「う、うんっ!!」
    鬼徹を鞘に収めたゾロとルフィがメリーに戻ってくる。事態が終結したことに皆安堵の表情を浮かべた
    「それにしても………ホントに妖刀だったんだなそいつ」
    ウソップが鬼徹の柄をチョンチョンと触る
    「結局、こいつはお前が負けたことが許せなかったのか」
    「みたいだな。どこまでもプライドの高ェ奴だよ。………いっ!!?」
    サンジの言葉にゾロはカラカラと笑った。だがその笑みもチョッパーのやや粗い消毒によって途端に引きつる
    「っ~~~!!チ、チョッパー?………怒ってんのか?」
    「当たり前だろっ!!いくら命に関わらなくたって………こんな傷わざわざ自分から作るような事許さないぞっ!!」
    「わ、悪かったよチョッパー………」
    「「「ぷっ………ははははっ!」」」
    先程まで何事にも屈しないような顔で鬼徹と相対していたゾロがたじろぐ様子に、仲間達は一斉に笑った

     


     あれから時が過ぎ、今ゾロはスリラーバークのルンバー海賊団の墓の前で手を合わせている。これまで己についてきてくれた雪走に感謝の念を伝えていた時、溢れだす妖気で自分の存在を主張してくる者がいた
    (今度こそ、お前はおれの事を見限るかと思ったんだがな)
    ゾロが心の中で独り言のように呟くと、相手は返事を返してくる
    『確かにテメェの情けねェ姿には呆れたがな。………まぁおれも信じてみることにした』
    (………?)
    『テメェは命ある限りあいつらを越えることを諦めねェんだろ?………ならおれはそれを見届けるまでだ。先に折れたコイツの分までな』
    (………そうか)
    『おれもテメェも………一匹狼だった筈なのにな。どこでどう間違えたんだか』
    (さァな)
    ケタケタと笑う妖刀の気配に口元を緩めながら、ゾロは野望に向かって進む事をまた新たに誓ったのだった
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