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    @FC_UNICORN1

    緑目のうさぎは、主にFF14の小説と、FF14のちょっとアレなイラストを描いたとき、ここに載せる習性があります。そのほかはTwitterへ。

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    もし、ヒカセンが5.0途中でアゼムの記憶を思い出したなら。書きかけを見つけたので、せっかくだからぽーい! ありったけのネタバレ注意! たぶんつづきます。たぶん。

    ##FF14
    #FF14
    #エメトセルク
    emetoselk

    もし、ヒカセンが5.0途中でアゼムの記憶を思い出したなら。1

     空に星が輝きはじめる。ここラケティカ大森林にも、夜が訪れたのだった。



     キタンナ神影洞をあとにして、俺たちはクリスタリウムを目指し、林道を歩く。その道中は、妙に静かなものだった。
    「蛮神であるゾディアークとハイデリン……そして、その召喚者だったアシエン……」
     ヤ・シュトラの呟きに、各々が反応を示す。
    「まさかここに来て、あんな話まで聞くことになるとはね」
     話とは、先ほどふらりと現れたエメトセルクの言葉である。使命を果たした安堵と同時に、彼の言葉は、俺たちに驚愕と不安をもたらした。

     キタンナ神影洞の壁画をなぞって語られた、忘れられた歴史。ゾディアークとハイデリン、そしてアシエンの正体。エメトセルクの言葉が、すべて真実とは限らないが、嘘である証拠もない。ここで議論しても果てがないことは皆も承知しており、俺たちは、とにかくクリスタリウムへの帰還を目指すのだった。

     ああ、気分が悪い。大罪喰いの光の影響もあるが、エメトセルクの話を聞いてから……いや、もっと前だ。エメトセルクと邂逅したときから、喉になにか、つっかえたような、もどかしい、焦ったい不快感があった。それが件の話を聞いたとき、感覚はより強く、俺を苛んだ。
     皆に気づかれない程度の、小さな溜息を吐く。アシエンには心身ともにかき乱されて腹立たしい。あのひょうひょうとした顔に、拳をぶち当ててやりたいものだ。そんな妄想をすれば、マヌケ面を晒す男に思わず口角が上がった。ハーデスがそんな顔をするとは思えないが、これはこれで……

     ふと、足を止める。ハーデスとは誰だ。

     自然と出てきた不思議な音の名前。どこか懐かしさを覚える、この名前はいったい……
    「どうしたの?」
     アリゼーが首を傾げた。皆も足を止めて振りかえる。なんでもないと答えるつもりだった。しかし今、なにかに焦らされたように、俺の足は踵を返していた。
    「みんなは先に帰っていてくれ」
     キタンナ神影洞へ走りだす。
    「ちょっと! 突然なによ!」
    「待ってくれ、私たちも……」
     追いかけようとするアリゼーとアルフィノを一瞥し、俺は言う。
    「また、クリスタリウムで」
     ついて来るな、と。

     §

     ふたたび訪れたキタンナ神影洞。背後を見れば誰の姿もない。来るなという意図は汲みとってもらえたようだ。少し乱れた呼吸を整えて、俺は壁画に歩みよる。

    ーー世界が分たれる前、そこには栄えた文明があり、多くの命が生きていた。

     エオルゼアでは見ない建物が建ち並ぶ、かつての世界が描かれた、そこに触れる。

    ーーしかし、理が乱れ、未曽有の災厄が発生。文明は、命は、危機に立たされた。

     その世界にふりそそぐのは、流れ星のような、数多の隕石。なんだろう、この気持ちは。壁画を見れば見るほど、胸を締めつける感情は。恐怖、悲哀、ちがう、これは……

    「あっ」
     懐古。

     理解した瞬間、足に力が入らず、崩れおちるように膝をついた。震える両手で頭を抱える。思い出したのだ。途方もない、はるか昔の記憶を。かつて自分が分たれる前、古代人として生きた前世の記憶を。
    「ハー……デス……」
     それはエメトセルクの真名だった。親愛を込めて何度も呼んだ、親友の名前だ。
    「まさか、そんな」
     知りたくなかった。世界を取り戻すためとはいえ、あいつの今日までの凶行で、どれほどの犠牲が生まれたことか。それは決して許されることではない。現に、アシエンの計画で失った仲間を思えば、怒りと憎しみを忘れずにはいられない。

     そう、前世の記憶を思い出したといえど、俺は俺だ。原初世界で生まれた俺の軌跡こそが、俺を形成する。かつての同胞には同情するが、彼らのために幾度も霊災を引きおこし、原初世界の命を犠牲にはできない。とすれば……
    「明かす必要はない、な」
     生真面目なあいつが、今さら俺の説得を受け入れるとは思えない。そして俺も折れる気はない。つまり行きつく先は免れない敵対だ。あいつがなにを考えて、俺たちを「裁定」しているのかは知らないが、この決断がせめてもの、かつての親友に向けた情けである。
    「おまえの敵は、ただのなりそこないでいい」

     いつか歩いた故郷、アーモロートを描いた壁に手を添え立ちあがる。そろそろクリスタリウムへ帰ろう。



    2

     テレポを利用してクリスタリウムに帰還する。星見の間を訪れれば、そこには水晶公の姿だけがあった。
    「おかえり。報告は既に受けているよ。此度も大罪喰いの討伐、ご苦労だった。本当にありがとう。ところで、あなたはキタンナ神影洞で突然別れたと聞いたが、なにか……あったのか?」
    「忘れものがあって」
    「忘れもの? それは見つかったのか?」
    「ああ。ちゃんと見つけてきた」
     嘘はついていない。忘れていた記憶を思い出しに戻ったのだから。大丈夫だという意を込めて微笑めば、彼は小さな息を吐いた。
    「よかった。あなたのことだから心配はいらないだろうが。ああそうだ。次の予定だが、まだ残りの大罪喰いの居場所を掴めていなくてね。わかり次第知らせるから、それまで体を休めていてほしい」
    「そうさせてもらう。今回の討伐では何度も謎解きさせられてな。正直、疲れた」
     そう言って右肩を回せば、水晶公は早口で「大丈夫か?」「必要なものはあるか?」と捲し立てた。

     §

     星見の間をあとにして、ペンダント居住館を目指す。最近管理人に教えてもらった近道らしい、人通りのないマーケットの裏を進む。

     その道中、ぐらりと視界が揺れた。
    「うっ……」
     倒れはしなかったが、数歩、足元がふらついて、近くの木に手をついた。しばらく目眩が治るのを待つしかないだろう。
     これは光の影響か。盗み聞きしたウリエンジェたちの話をそのままに考えるなら、最終的に光は俺のエーテルを乱し、俺自身が大罪喰いになるとか。勘弁願いたい。だが、ウリエンジェは策があると言っていた。今はそれを信じるしかない。

    「おや、誰かと思えば英雄殿じゃないか」

     背後からかけられた声に心臓が跳ねた。しかし平常を装い振りかえれば、そこにはハーデスの姿があり、気怠そうな足取りでこちらに歩みよる。できれば、まだ会いたくなかった。
    「ずいぶん調子が悪そうだ」
     呆れたような、馬鹿にしたような物言いだ。加えて「これだからなりそこないは」と口にする様は、なんだか大げさで、芝居がかったようだ。こいつ、記憶が戻る前は気にしなかったが、昔からこんな剽軽な風体だっただろうか。もっとアーモロートの市民らしく、冷静沈着な男だったような……
    「なんだよ」
     視線に気づいた彼は、俺をジットリ睨んだ。慌てて目を逸らす。
    「別に。それより、まさかわざわざ心配して来てくれたのか?」
     からかうように言えば、彼は「それこそまさか」と失笑を見せた。
    「だろうな。まあ、なんだっていい。俺はしばらくここで休むから、昼寝なら他所で頼む」
    「なんだ、ずいぶん落ち着いているな」
    「原因ならわかってんだ。おまえも気づいてんだろ? 俺のエーテルが、光に侵食されかけているのを」
    「ほぉ、自覚はあったか。それでもおまえは、大罪喰いを討伐しつづけると?」
    「おまえがなにをもって俺たちを裁定しているのか知らねーが、まあ見せてやるよ。俺が光を制するところを」
     強がりでニヤリと笑ってみせた。すると彼は、挑発に乗るわけでもなく、珍しい無表情で俺を見た。なにか変なことを言っただろうか。不思議で俺も見返せば、今度は彼が視線を逸らした。
    「まあいい、せいぜい足掻いてみせろ」
     彼はくるりと背を向け、片手をひらひらと振った。ああ、その仕草は……
    「ははっ、ハーデスの悪い癖だぜ? 都合が悪くなったらそうやって逃げるのは」
    「は?」
     立ち去ろうとしたハーデスは足を止め、丸めた双眼をこちらに向けた。

     あっ

     しまった。
    「おまえ!」
     ハーデスはすばやく詰め寄り、俺の襟を鷲掴む。
    「うおっ」
     身長差がある彼に引きあげられ、踵があがる。そうして迫った彼の、目を見開いた剣幕に、思わず息を止めた。
    「まさか、思い出したのか……!?」
     襟を掴む手が、若干震えていた。俺は焦りと同時に、そんな彼の姿に、不思議な切なさを覚えた。それでも……
    「な、なんのことだ?」
     俺は惚けてみせた。
    「俺、なにか、おかしなこと言ったか?」
     声が震えないよう必死に努める。するとハーデスは、困惑したように眉を顰めた。
    「……おまえ、今の言葉、もう一度言ってみろ」
    「えっ? お、俺、なにかおかしな……」
    「ちがう! その前だ!」
    「エ、エメトセルク、逃げるのかって……おっと」
     襟を離され、数歩ふらついた。目眩はまだ治まってはいないが、倒れないようふんばり、ハーデスを見た。彼は俺を凝視しながら、ぶつぶつとなにか呟いている。聞き取れたのはひと言、「聞き間違えか?」という言葉だけだった。とりあえず誤魔化すことはできたか。

    「それじゃ、俺そろそろ行くわ。じゃあな、エメトセルク……」
     俺は逃げるように、早足でペンダント居住館へ向かった。



    3 ※三人称視点

     少しふらつきながらも離れていく背中を、エメトセルクはしばらく見つめて、思案した。しかし思案に浮かぶ顔は彼のものではない。ローブを揺らし、赤い仮面の下で微笑む、かつての親友だった。

    ーーははっ、ハーデスの悪い癖だぜ? 都合が悪くなったらそうやって逃げるのは。

     真名を呼ばれたのは、自分の願望から表れた幻聴だったのか。だとすれば、情けない。エメトセルクは片手で目元を押さえた。元来の猫背がさらに丸まった。
    「冷静に考えろ、私……」
     自分を諌めるように呟く。そもそも、かつての親友と同じ魂を継いでいようと、分たれたそれは、また別の存在である。記憶を有しているはずはない。やはり自分の聞き間違えだったのだ……

     が、

     指のあいだからまだ見える、遠くの背中から視線を逸らせない。もしかしたら。万が一。そんな淡い期待が一瞬でも灯れば……
    「ーーーー」
     友の名を、呼んでしまう。



    4

     翌日。

    「ふぁ……」
     大きく口をあけて、ベッドから起きあがる。ここはペンダント居住館の、自分に充てられた部屋である。昨日、逃げるように帰宅した俺は、早々に就寝したはずだが、時計を見れば既に昼を過ぎていた。大罪喰いと戦った疲れもあっただろうが、ずいぶん寝たものだ。

     部屋の窓を開ければ、気持ちのいい日差しが俺を照らした。あたたかさと眩しさに目を細めた。さて、今日はなにをしよう。大罪喰いの居場所がわかるまでは当分自由だ。このまま二度寝するか、鍛錬するか、それとも……
    「あ、武器の修理」
     愛用する武器の耐久度がそろそろ心許ないことを思い出す。俺は軽装に着替え、武器と小さなカバンだけ持って部屋を出た。

     §

     訪れたマーケットの修理屋に依頼し、武器とギルを手渡した。腕のいい修理屋が言うには、夕方には受け取ることができるようだ。それまでのあいだ、買い物を兼ねた散歩でもして時間を潰そうか。そう考えていると、よろず屋の前でサンクレッドを見つけた。
    「おーい」
     近づけば、彼は「よお」と片手をあげた。
    「水晶公から聞いたぞ。昨日、突然引きかえしたのは忘れものをしたから、なんだって? 驚かすなよな」
    「ごめんて。それより、なにを買いに?」
    「ダークマターだ。これから大罪喰いの情報収集のため、アム・アレーンへ行くんだ。道中、ちょうどいいところに修理屋がいるとは限らないからな」
    「そっか。頼りにしてるぜサンクレッド」
    「ああ。おまえは次の戦いに備えて、きっちり休んでおけよ」
    「おう。けど、残念だったな……」
    「なにが?」
    「武器の修理を依頼したばかりだったんだ。そのあいだ、マーケットを回ろうかと思ってて、一緒にどうかなーって」
     そう言えば、サンクレッドは苦笑いを浮かべた。
    「おまえ……さては俺を荷物持ちにさせようとしたな?」
    「いやいや、純粋におまえと買い物を楽しみたかっただけだって。はぁ、さみしーなぁ」
     わざとらしくチラ、チラとサンクレッドを見れば、彼は「ったく」と困ったように笑った。

    「だったら、私が付き合ってやろうか?」

     一瞬、奇声をあげそうになった。振り向けば、やはりそこには今あまり会いたくない男、ハーデスの姿があった。サンクレッドは笑顔から一転、鋭い視線をハーデスに向ける。
    「なんの用だ」
    「私が尋ねているのはおまえじゃない。そこの英雄殿だ。私もちょうど暇しててね。せっかくだから、おまえの買い物に付き合ってやろうじゃないか」
     その申し出に、俺とサンクレッドは目を見開いた。これは本当に気まぐれか。それともアシエンらしく、なにか企んでいるのか。横目でサンクレッドを見れば、明らかに後者を考えて警戒しているようだった。彼は武器が手元にない俺を庇うように、一歩、前に出る。
    「こいつの付き添いなら、アリゼーたちが喜んで名乗り出るだろう」
    「だーかーらー」
     ハーデスは深い溜息を吐いた。
    「私は英雄殿に尋ねていると言ってるだろう。なんだ? おまえはこいつの父親か? それより、さっさと調査とやらに行ったらどうだ」
     サンクレッドは舌打ちをした。そうして俺を見る。
    「アリゼーとアルフィノは果樹園のほうにいる。ヤ・シュトラは資料館だ。じゃあ、気をつけてな」
    「あ、ああ……」

     サンクレッドが立ち去り、ハーデスとともに残された俺は、いたたまれず頬を掻く。一方、ハーデスは去った男を鼻で笑った。
    「頭の硬い奴め。まあ、一度ラハブレアのじいさんに体を乗っ取られたと聞いたからな。過剰に警戒する気持ちはわからんでもないが。それで? どこへ行きたいんだ?」
     未だ信じられないが、この男は本当に買い物に付き合うつもりらしい。彼とふたりきりなんて、すこぶる気を使うから、できれば遠慮したいのだが……

     いや、むしろチャンスか?

     彼は理論的ゆえに口数が多い男である。会話を重ねれば、彼が言う「裁定」の真意を掴めるかもしれない。ならば、ハーデスの真名を呼ばないことにさえ気をつければ……
    「えっと、まずは装飾具を見たい、かな?」
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