あんたって何にでも狙われちゃうわけ?修行と称して抜け出そうとする雅をピシャリと諫めたり、空腹を訴える蒼角をもうすぐ昼時だからと宥めたり、病欠休暇を申請しようとする悠真に冷たく眼鏡のレンズを光らせたりと、皆の様子に目を配りながら書類の高層タワーマンションを捌き続ける鬼の副課長こと柳の手も止まらぬ、いつもの長閑な対ホロウ六課のオフィスにて。倦んだ空気を突如として切り裂く電子音が、悠真のポケットから五月蝿く鳴り響く。
「悠真、助けて!お兄ちゃんが……!」
就業中の規定破りをじとりと睥睨する桃色の瞳は、着信元の名前を見て表情を明るくした彼を見て更に鋭さを増したものの、ピッと通話を繋げた瞬間に予測しない大音量の救助要請が発せられたのを境にその温度を変える。先程までとは異なる意味で静まり返ったオフィス内で、四対の目がそれぞれ交わり無音の会話を成し遂げると、課の責任者たる長はこくりと神妙に頷いて斥候役に重々しく命を下した。僅か数秒の出来事だ。
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