Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    saruzoou

    @saruzoou

    さるぞうと申します。
    🐉7春趙をゆるゆると。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 🐱 🐓 🍘
    POIPOI 32

    saruzoou

    ☆quiet follow

    しつこくも炊飯器の話の続き。ナンちゃん目線の話です。仲間からみた二人と、この3人の関係がとても好きでいくらでもいける気がする…。

    炊飯器の話2瞼にあたる柔らかい日差しと、食欲をそそる匂いにナンバは目を覚ます。
    本当は少し前から意識だけははっきりしていて、炊飯器のアラームや、台所で料理をする音や、楽しげな小さな話し声は聞こえていた。
    寝返りを打って台所を見ると、案の定そこには春日と趙の姿があった。
    長身でガタイのいい二人が並んで台所に立つと、昭和仕様の小さな台所はますます小さく見えて、ままごとのセットのようだ。
    「そう、しゃもじは縦に切るように入れて、かき混ぜて」
    「こうか?」
    「そうそう、上手だねえ、春日くん」
    「柔らかすぎねえか?」
    「炊き立てだからね、こんなもんだよ」
    「味見してみてくれよ」
    「そんな心配?どれどれ…うん、大丈夫、ちょうどいいよ」
    「本当か?」
    「うん、美味しく炊けてるよ。ごうかく〜」
    「よし!」
    ナンバを起こすまいという気遣いか、それとも顔を寄せ合う近い距離に自然とそうなるのか、小さな声で囁くようにやりとりをする春日と趙に、思わず頬が緩む。
    新婚か。
    頭に浮かんだ言葉に苦笑しながら、ナンバは台所の二人に向かって声を掛ける。
    「俺はお前らがそこでキスしても驚かねえぞ」
    びっくりしたように振り返る春日と、のんびりと首を傾げた趙の手にはしゃもじとおたま。
    「はァ?なんだナンバ起きたのかよ」
    「オハヨ〜ナンバ。ご飯できたよ」


    「新婚ていうよりは、ママと坊やだね」
    先程のナンバの言葉の意味を正しく理解していた趙が、食事の合間に言う。
    趙は普段むやみやたらと春日を甘やかすくせに、時折こうした線引きをするような、踏み込ませないような言い方をする。
    趙の言葉に春日の眉が少し下がって、なんとも言えない表情をした。
    強いて言うなら、迷子の子供のような。
    でも、これは無自覚だ。
    「昨日の夜、春日くんにお米の研ぎ方と炊飯器のタイマーセット教えたんだ。
    だから今日のこのご飯は、春日くんが作ったんだよ」
    安物の茶碗に盛られたご飯を恭しく両手で持ち上げ、晴々とした顔で趙が言うと、春日が得意げな顔をしてナンバの方を向く。
    「どうだ、ナンバ。うまいか?」
    「うめえよ」
    最新の炊飯器で米を炊くなど、誰がやっても同じだろうと思うけれど、それは口にしない。
    春日が得意げで嬉しそうで、その顔を見ているだけで本当に美味くなった気がするからだ。
    この3人で、小さな座卓を囲んで朝食を取るのがすっかり日課になった。
    米を炊いて、味噌汁と、たまに副菜があるだけの簡単な朝食。
    今日の味噌汁は、じゃがいもとベーコン。
    味噌汁にベーコンという組み合わせにナンバと春日は「ベーコンはねえよ!」と反発したが、趙に騙されたと思って食べてみてよと言われて以来、すっかり春日のお気に入りだ。
    ここ最近は、八割くらいの確率で春日の好きな具の味噌汁が出てくる。
    いつだったか、ナンバが『一番の好物ばっかでズリィぞ』と言ったら、いつも笑ってのらりくらりとかわす趙が、口の中で何かをモゴモゴ言って、逃げるようにどこかへ行ってしまったことを思い出す。
    「食材調達と片付けは俺とナンバでやってるけどよ、趙は作る分早く起きなきゃならねえだろ?だから、なんか他に出来る事ねえかなって思ったんだよ。ナンバ、お前、米研いだことあるか?案外奥が深いぜ〜」
    「いや深くないよ。聞いてよナンバ、春日くんにまずは軽くお米洗ってって言ったら、洗剤手に取ったんだよ?自炊経験ないって言っても、流石にそれはないと思わない?」
    「言うなよ!」
    嬉しそうに楽しそうに、交互にナンバに向かって話しかけてくる二人の背景には、カタギの自分には想像しきれない程の重い過去がある。
    新婚、という言葉が先程は脳裏に浮んだが、この二人はどこか青春のやり直しよりも遡り、家族のやり直しを求めている部分もあるのかと、ふと思った。
    「…やめた」
    最後の一口を味噌汁で流し込んだナンバが呟くと、春日と趙が揃って首を傾げる。
    ああこいつら、こんな仕草まで似てきやがった。
    「実は弟から、一緒に住まないかって誘われてたんだよ。でも俺がここ出てったら、お前ら絶対イチャイチャするだろ。邪魔してやる」
    「はあ?出てくって…いや、イチャイチャってなんだよ!」
    春日が耳を僅かに赤くして文句をいう横で、趙は明らかにホッとした顔をしていた。
    弟が世話になったコミジュルの子を通して、もしかしたらソンヒあたりから聞いていたのかもしれない。それでも、黙っていてくれたのかと思うと、趙の情のようなものを感じた。
    「趙、明日の味噌汁は俺の好きなのにしてくれよ」
    「オッケ〜。豆腐とわかめでしょ?」
    「ちげえよ!そりゃ足立さんだろ!」
    今はまだママと坊やの関係の二人が、新婚のような関係になるまでは、この少し歪で心地良い同居生活を続けようとナンバは決めた。
    そう遠くない話かもな、と思いながら。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🍚🍚☺💗🍚🍚🍚❤❤❤💖💞💞☺☺☺🍚🍚🍚🍚🍚🍚🍚❣💒💒💒😭🙏☺👏👏👏💖💖💖💖💞💖😭🙏😍💖💖💖☺😭👏👍☺☺☺💖👍🍚🍚🍚☺🍡
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works