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    pagyouSY

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    pagyouSY

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    往来でバトルなんて破廉恥な!! ──ガラルに、バトルタワーが誕生した。
     その施設は元チャンピオン、ダンデの「ガラルのみんなで強くなりたい」その願いを叶える第一歩として設立されたものだった。参加者同士でポケモン勝負を重ね、勝ち続けると、そのトレーナーのランクに応じてオーナー──ダンデとの勝負に臨める。そして彼にも勝利するとランクが上がる、そういう仕組みだった。

     はっきり言って、ウルシはこの施設にどハマりしていた。
     相当な用事がない限りはほぼ毎日バトルタワーに篭り、たった1ヶ月でハイパーボール級にまで到達してしまうような体たらくであった。

     ……当然、彼女の恋人であるキバナは面白くなかった。とはいっても彼女はバトルにかまけてキバナとの予定を駄目にしたことはなく、彼女はしっかり彼との時間を取っていた。しかし、キバナは拗ねていた──なぜ恋人の自分と、バトルをしてくれないのか。

     いや、百歩譲ろう。彼女がバトルにハマるのはいい。それはいいのだ。

     でもそのバトルの相手に定期的に自分のライバル──ダンデがいるのが気に入らない。顔を見知ったどころではない相手と、恋人がバトルをしているとなると、なんだかひどく落ち着かないのだ。もちろんダンデと彼女の間になにか、対戦相手以上の感情が発生している、というような疑いにまでは至っていないが──しかしながらキバナは気に入らなかった。



     とある日のデート。
     この日、二人はナックルの中心地から少し離れた隠れ家的カフェ──きのみをふんだんに使ったタルトが名物──が今日の目的地だった。やがて運ばれてきたタルトを写真に写した後、キバナはカトラリーケースからフォークを2本とり、片方をウルシに渡した。

    「ありがと」

     彼女は少し微笑んでキバナに礼を言う。久々の逢瀬、その中で見ることのできた可愛い恋人の笑顔に、キバナは思わずニヤつきそうになるのを抑える。タルトの硬い生地にフォークを立てようと苦戦している様も可愛らしい──そう思っていたところで、ふと彼女がタルトを口に運ぶのをやめて、思案を始めた。

    「……どうかしたか?」
    「あっごめん……ちょっと」

     キバナがそう問うと、ウルシは困ったような表情でまたタルトにフォークを刺した。ただ、キバナは察していた。彼女が自分とのデートの途中でもバトルのことに気を取られてしまったのだと。キバナは思わず口を開いた。

    「なあさ……そんなに楽しいかよ、バトルタワー」
    「ええっ?」

     そう言ったところで、キバナはまずった、と思う。前々からの拗ねた気持ちのせいで、キバナの口調は彼の想定より刺々しかった。ウルシは当然、急に不機嫌になった恋人に驚きと困惑を隠せないようで、一度フォークを置いた。

    「楽しいよ?それがなにか……あった?」
    「いやわりぃ……気になっただけだ」

     オレさまのライバルがオーナーしてるわけだしよ。キバナはそう言って取り繕うとする。しかし、ウルシはそれを許さなかった。

    「ねえキバナ。もし私に言いたいことがあるなら、はっきり言ってよ」

     彼女はキバナを真っ直ぐ見据えてそう言う。キバナは、自分の気持ちが全くもって幼稚であることは分かりながらも、彼女に答えるしかなかった。

    「……とバトルしてくれよ」
    「え?」
    「そんなにダンデのやつとバトルするならさあ!オレさまと!バトルすればいいじゃないかよ!!」
     
     ……キバナがそう言い切って周りを見ると、ウルシだけでなく他の客、店員もポカンとした表情でキバナを見ていた。しまった、と思いその大柄な体を思わず縮こめて椅子に座っていると、ウルシがええと、と言い淀んだ様子で口を開いた。

    「……その、ごめんね。だってキバナ忙しいし、それにジムリーダーの立場だから安易に人とバトルもしてはいけないと思って……」
    「オレさま、オマエのためには時間なんていつでも作れるし、プライベートのバトルは禁止はされてない。それにな、」
    「それに?」
    「……嬉しくねえよ。オレさまのライバルはオマエとバトルできてるのに、オレさまは全然できないなんて」
     キバナがそう言うと、ウルシは驚いた顔をした。 
    「……っ!いいの?キバナ」
    「なにがだ?」
    「私とバトル、してくれるんだ?」

     ウルシの目はきらめいている。そう、彼女もなんだかんだでキバナとバトルがしたかったのだ。そしてキバナの答えはもちろんイエス。すぐさまキバナはナックル公営のバトルコートを予約し、二人はお茶会をさっさと切り上げてそこに向かった。



    「手持ち数は?とはいえ、私の手持ち的に3対3しか無理だね。道具は?」
    「なし」
    「……了解」

     今回のバトルにおけるルールを決め、お互いコートの端と端に移動する。
     ナックルシティの公営コート。バトルが盛んなガラルであるため、常にコートの予約はいっぱいだが、今日は運良くキャンセルがあったのか比較的近い時間に予約を取ることができた。いつもキバナが使用しているジムやリーグの専用コートには設備や広さでやや劣ってしまうが、それでも十分に管理されていて試合をする分には全くもって申し分はない。

     地下にある屋内コートを望むことのできるバリア付きの窓からは、今からバトルを始めるトレーナーがキバナであることに気付いたであろう利用者が数人覗いていた。しかし二人ともそんなことは気にしていない。二人が見ているのは、今から勝負する相手、それだけ。

     セットされた、バトル開始を告げるブザーが鳴る。
     お互い、最初のポケモンを繰り出す。

    「行って……!クレッフィ!」
    「頼んだぞ!ヌメルゴン!」
     ウルシの最初のポケモンはクレッフィ。キバナはヌメルゴンを選んだ。
    「クレッフィ、『でんじは』!」
    「……っ!やるなァ!『だくりゅう』!」

     だが、キバナのヌメルゴンはクレッフィの放った電気の檻をやすやすとかわした。そして、ヌメルゴンはそのお返しというように濁った波をクレッフィに向けて放つ。その波はクレッフィに直撃し、宙に浮かんだ彼の体が一瞬ぐらつく。

    (……っ!)

     ウルシは自分のポケモンの負傷にやや動揺するが、トレーナーが取り乱してなどいられない。歯をぐっと食いしばり、次に展開するわざについて頭を回らす。

    「クレッフィ、『ひかりのかべ』」
    「ほお……!身を守ることを選ぶか!」

     自分の優勢を作らせない試合運びに持ち込もうとするウルシに、キバナは歓喜を感じる。そうこなくては……!
     ヌメルゴンはあまごいをして、場を整える──彼女の覚えている『かみなり』は天候が雨の時、本来低い命中率が100パーセントになる。
     ウルシもそれに気付いたようだった。降り出した雨に彼女は顔色を変える。

    「……っよけてッ!クレッフィ!!」

     ……だが遅かった。ヌメルゴンの放った『かみなり』は、クレッフィに直撃し、彼は戦闘不能になる。ウルシはボールに戻っていく、先駆けを務めたクレッフィに小さく感謝の言葉を述べて、次を繰り出す。

     キバナは昂っていた。

     ウルシとのバトル。本来戦っているのは自分たちのポケモン同士のはずなのに、なぜかトレーナーの自分たちが、まるで刃を合わせているかのよう。お互いを探り合い、見極め合い、鍔迫り合うこの時間が他のどんな行為よりも強く繋がり合っていると感じさえする。
     さあ、次はキバナに何を出す。
     
    「行きなさい、ニャイキング!」

     次に繰り出されたのはよくウルシの膝の上で喉を鳴らしているポケモンだった。だが今は、彼女の爪よりも鋭い目線をヌメルゴンに向けている。
     雨の中、しばらくの間睨み合いが続く──先に動いたのはヌメルゴンの方だった。
     もう一度、『かみなり』。
     だがニャイキングはそれを華麗に避ける。
     いつの間にか雨が上がり、『かみなり』の命中が落ちていたのだ。そこにすかさずニャイキングは『アイアンヘッド』をお見舞いした。

    「……ッ!」

     キバナは一瞬動揺した。しかし、それは高揚の伴った動揺だった。
     一瞬、追い詰められた。それが異様に嬉しくて、すぐさまに次の指示をヌメルゴンに下す。

    「ヌメルゴン、『あまごい』!降れよ雨!オマエは雨の中でこそ力を増す!」
    「……さっせるかぁ!!」

     ウルシが叫ぶ。

    「ニャイキング、『ちょうはつ』しなさい!」

     ニャイキングはコートの中を逃げ回りながら、ヌメルゴンを誘う。キバナはすかさずヌメルゴンをなだめるが、すでに遅く、彼女はニャイキングの挑発に完全にのってしまった。怒り狂ったヌメルゴンは、はちゃめちゃにわざを繰り出してコートを荒らし、ニャイキングはそれを華麗によけていく。

    (……クソっ、やるなぁ!)

     キバナは笑う。彼の動きは荒々しさを増し、興奮した呼吸と共に次の指示を吐き出す。

    「『なみのり』!やれ、ヌメルゴン!オマエの波で敵を飲み込め!」
    「ニャイキングよけて!!」
     しかしコート全てを飲み込むようなヌメルゴンの『なみのり』の波は、ニャイキングの体を飲み込んでいく。キバナはウルシの2体目を落としたことを一瞬、確信した。

    「──ニャイキング。『アイアンヘッド』」
    「なに!?」

     引いた波の中から、びしょ濡れの毛玉が飛び出し、ヌメルゴンの額に強烈な一撃を食らわす。
     ヌメルゴン、戦闘不能。

    「ウルシよ。腕を上げたようだな」
    「……キバナさ、拗ねてたでしょ」
    「………イマデスカ、それ」

     ウルシはくすくすと笑った。キバナ自身でも幼稚と認識していた自分の感情を今、指摘され、彼は恥ずかしさから肩をがくりとさせる。その様子をびしょ濡れのニャイキグがじとりとした目付きで眺めている。

    「ごめんごめん。実際、私がバトルタワーに大ハマりしてたのは事実」
     彼女は続ける。
    「でもね、私登りながら思ったんだ。私が強くなって、キバナを……他のジムリーダーほどじゃなくても、なんとか追い詰めるくらいになれたら、キバナ喜ぶかな、って……ねえ。楽しい?」
     彼女は問う。
    「……オレさまが、それにノーと言うと思ったかよ!」
    「ぜんっぜん!」

     ──またウルシは笑う。キバナもつられて笑うが、その手には次のポケモンの待機しているボールが握られていた。

    「ゆけ!フライゴンよ!」

     ボールから飛び出たポケモン──「砂漠の精霊」の異名を持つそのポケモンはコートの中を自由に飛び回る。ニャイキングは、その様子をつまらなそうな目で見ている。

    (……飛べるポケモンとニャイキングじゃ、分が悪い。どうしようか、ここは『とんぼがえり』?いやでも……)
     ウルシは悩む。だが、その五秒にも満たない思案が次に彼女を追い詰めることになった。
     
    「……ウルシよ、勝負の最中、けっして気を抜くべきではないことを、このキバナさまが教えよう」
    (っあぁ!下から!?)

    ──『じしん』。
     その強烈な衝撃が地のニャイキングを襲う──よける時間はウルシ自身の思案に食われ、一瞬たりとも用意されていなかった。
     コートの上の二人、上部の窓から二人の試合を見ている観客たち、その誰もがニャイキングの戦闘不能を予想した。
     だが、彼女は立っていた。それを目に留めた瞬間、ウルシは叫ぶ。

    「『あばれる』!」
     ニャイキングの決死の抵抗が、フライゴンの体に直撃する。しかし、ニャイキングはそのわざで力を使い切ったのか戦闘不能になり、ウルシの手元に戻っていった。

     キバナが2体、ウルシは残り1体。
     再びウルシは追い詰められた。
     しかし彼女の顔は不思議と笑顔だった。
     大好きな誰かと、ぶつかり合って、力を競い合う。
     バトルタワーでの他のトレーナーとの勝負も十分楽しかったが、キバナとの勝負はそれらでは得られない高揚に満ちた幸福感を与えてくれた──彼女は最後の1体を繰り出す。

     ……彼女を繰り出すのに、言葉は不要だった。
     ウルシは祈るようにボールを額に当てた後、そのボールを投げた。
     ──ハガネール。10メートル近いその巨大なポケモンが、コートの中に現れた。巨大な鉄の蛇は、その主人を守るようにそびえ立っている。

     フライゴンは、未だ空中を飛びながら様子を伺ったままだ。またもや勝負は膠着状態に陥り、お互い、どちらが先に仕掛けるか伺っている。
     ウルシが動いた。

    「ハガネール『りゅうのまい』!」

     その間、空中から攻撃が降ってくるかもしれないというリスクと、上がった攻撃力でフライゴンを容易に撃ち落とせるかもしれないメリットを天秤にかけ、ウルシは後者を選んだ。ハガネールが低い鳴き声と共に、鈍く輝く体をくねらせ、舞う。
     ──だが、その舞いには一部の隙もない。それゆえキバナとフライゴンは舞いの間一切の攻撃を許されなかった。

     ウルシは、おそらくキバナがハガネールに『じしん』を当てる隙を狙っているのだろう、と踏む。仕留め損ったとはいえ、先ほどニャイキングをほとんど瀕死まで追い詰めたそのわざで、またハガネールも倒そうとしている──そのはずだ。

     拮抗が続く。
     バトルコートには、2体と2人の、ひりついた空気が漂う。

     キバナが動いた。

    「今だフライゴン!『じしん』!」
    「……っ!『アイアンテール』!!」

     キバナのフライゴンが地を揺らすために、ホバリングしていた位置から、急降下してハガネールに接近する──ウルシは、この瞬間を待ち望んでいた。

     フライゴンが地を揺らす姿勢に入るや否や、ハガネールの硬い尾がフライゴンの体に直撃する。フライゴンの体は吹っ飛び、コートに張り巡らされていたバリアに激突する。

    「……ッ!!」

     キバナが急いで振り返ると、そこには激突し力無く落下するフライゴンの姿があった。フライゴンは戦闘不能になり、キバナのボールに戻っていった。

     ──1対1。

     ただしウルシのハガネールはすでにダメージを受けていた。フライゴンの『じしん』は不発ではなく、若干の威力をもってハガネールに当たっていたのだ。じめんわざの『じしん』は、はがねタイプであるハガネールに効果抜群。ハガネールは半分ほどのHPでキバナの切り札と対戦しなければいけなかった。

    (……だけど!)
     ウルシは思う。
    (私とハガネールなら、きっと勝てる)

     ジュラルドン。トップジムリーダーであるキバナが、常に最後に出すポケモン。
     キバナはその爛々と輝く竜の目で、相棒を繰り出した。

    「ジュラルドン、『アイアンヘッド』!」

     キバナはジュラルドンを繰り出した直後、わざを指示する。はがねタイプにはがねわざは威力がいまいちだが、『アイアンヘッド』で時々発生するポケモンのひるみを狙ったのだろう。ジュラルドンのその攻撃はハガネールに直撃したが、彼女はひるまない。
    その後ろに、自らのパートナーがいるから。ひるんでなど、いられない……!

    「(ハガネールの体力は少ない……いくらあの子の防御が高いとはいって、長期戦は望めない。なら……!)ハガネール、お願い!もう一度、『りゅうのまい』!!」
    「させねぇ!」

     ハガネールがまた鳴き声を上げその体で神秘の舞いを踊ろうとした時、ジュラルドンの『ボディプレス』が飛んできた……!

    「……ぁあっ!」
     ウルシは思わず叫ぶ。はがねタイプにかくとうわざは効果抜群。彼女は一瞬負けを確信した。
     しかし、違った。
     ジュラルドンの攻撃によって上がった土煙の中、ハガネールの姿は見えないが、ウルシの耳には確かに聞こえた。
     ──自分はまだ戦える、その声が。

     土煙が収まる。そこには、ボロボロになりながらも再び起き上がる、ハガネールの姿があった。

     キバナは息を呑んだ。
     これほどまでとは、思っていなかった。
     ここまで、ウルシがついてくるとは。
     これほど、ウルシとポケモンたちの絆が強いとは。
     
     だが、練度が十分に高いのも、相棒たちと固く絆を結んでいるのはキバナも同じ。
     ──ここから先は、経験のみがものを言う。いかに相棒のポケモンを自らの半身にすることができるか、それがこの勝負を分ける。

     満身創痍のハガネール。まだ体力十分のジュラルドン。 
     この状況で勝敗がまだわからないのは、お互い相手にとって有効打になる技をもっているからだ。ハガネールには『じしん』が、ジュラルドンには『ボディプレス』が。

     さあ一騎討ち。

     2体のポケモンが、お互い疾風のように相手に向かって突撃する。
     ……正直、ハガネールの勝算は低い。だが、もしわざが急所に当たれば、もしかしたら。運がウルシとハガネール、1人と1匹に向けば。

     轟音が響く。
     2体のわざが、ぶつかり合う。
     ──立っていたのは、ジュラルドンだった。



    ※※※

     ──後日、シュートスタジアム。
     キバナは行われるトーナメントのために控え室にいた。とはいえ試合開始まで、まだ時間は十分すぎるほどあった。キバナは手持ちの最終調整を行うために、一度控室を出て練習用のコートに向かおうかと、考えていた。そこに思わぬ来客があった。

    「……なんだ、ネズか」
    「お久しぶりですね、キバナ」

     元あくタイプのジムリーダー、ネズが控室のドアからひょっこり顔を出した。
     彼はどうやら今回のトーナメントに出場する妹のためにここシュートに来ているようだった。キバナは座れよ、と促すがネズはいいえ、構いませんよ、と断った。

    「ところで……こないだは随分とSNSを騒がせちまったようですね」
     ネズがおもむろに言う。
    「っあ〜…まあ、な。」

     ネズの言う「騒がせた」ことというのはウルシとのバトルだった。あのキバナが、共用の施設で、しかもバトルの相手は付き合っている子らしい!というニュースはまたたくまにインターネットにもリアルにも広まり、結果として、燃えた。カブのごとく。

    「それにしてもオマエ、」
    「なんだよ」
    「……破廉恥、ですね」

     ネズの突然の発言にキバナははぁ!?と声を上げて驚く。
     当のネズは、それに気付いていなかったのか?と呆れたような顔をした。

    「真っ昼間からカノジョと、衆目環境で激しいバトルなんて、おれはしません」
    「あっ……いや、その、ハイ」

     ネズはそれだけ言って、キバナの控室から出ていった。



    (それにしても、あの写真)
     ネズは、SNSにアップされていた、ウルシとのバトルに興じるキバナの写真を思い出す。当然許可のない撮影なのだが、ガラルのジムリーダーは往々にしてそういったファンあるいはパパラッチの撮影した無許可の写真がインターネット上に拡散されるものだった。

    (見せつけるように目の前の相手に齧り付きたい、なんて顔付きをしやがって……)

     ネズは思案する。

    (いや……もしかしてわざと、ですかね。もしそうでなければ……)

    「……たちの悪い」

     ネズは、誰に言うでもなくそう呟いた。

     


     
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