養父パロ影弓キャス「おとうさんと呼ぶのを、やめようと思う」
白いモーニングカップについだ食後のコーヒーをまずキャスターの前に置き、向かいの椅子の背を引いて深くかけながら、彼はまっすぐに目を見てそう言った。その声は別段反抗的というのではなく(思い返してみれば彼には反抗期というもの自体なかった)、決然たる語調というわけでもなく、春休みにアルバイトをしようと思う、と言ったときとさほど変わりなく聞えた。
その朝、寝巻きのズボンだけを部屋着——繰り返し洗われてちょうどいい具合に肌になじむ、コットン100パーセントのストレートパンツ——にはきかえてリビングへ行くと、夜のうちに洗い上がった食器洗浄機の中身をアーチャーが手際よくひとつひとつ棚に戻し終えるところだった。
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