ネクタイ「おい、こっちに来い」
ソファに腰掛けていた憲助はキッチンで昼食の後片付けをしていた豆銑に声をかけた
「ン?」
「おまえのネクタイ…曲がってるぞ」
そういえば…左手を無くしてからは上手く結べないんだったな…………
そう豆銑は考えながら憲助の横に腰を掛けた
「……………………」
憲助は言葉を発せず、長くてゴツゴツとした指で豆銑のネクタイを結び始める
きっと、悪かったな…とかオレのせいで…とか思ってるのだろう……否、単純にネクタイの歪みが気になっただけかもしれないな、と思った豆銑だったが憲助が何も言わないのであれば己も口を開かず憲助に身を任せる事にした
「ン、できたぞ」
そう言って、両手でポンッと豆銑の胸を軽く叩いた憲助だったが、不器用が故にネクタイはまだ少し曲がってる
「ありがとうございます」
それでも、憲助さんが気にしてくれるだけでとても嬉しい
自分の無い左手で憲助の頬に触れる
微笑む憲助をみて豆銑もまた微笑んだ