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    nitoko15

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    nitoko15

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    長すぎてシリーズ物。クダノボ。

    雷鳴と、そして隠れ家




    雷雨に濡れた双子の今と過去。

    同居はしているけど、兄弟の関係から脱していない所からのスタート。

    雷鳴と、帰路地下には、身を隠せる場所には、
    直接は降りしきる雨も、掻きむしるように鳴り響く雷も関係無い。






    二轍を突破し、休日前にギリギリ三轍を見事回避したサブウェイマスターの二人は、日付が変わる少し前ではあったが、久々に外の空気はちゃんと吸った。
    そしてギアステーションの出入り口から、荒れ狂う空を二人とも眺めて呆然としていた。
    その光景ときたら、強風が轟き、雨は激しく撃ちつけていて、決して穏やかな物では無かった。


    うん、完全にアウトだわ、これ。


    「あーーすごく降ってるね…」


    あまりの光景に、他人事の様な感想が出た。
    でも大丈夫大丈夫。いつも鞄の中には折り畳み傘が………うん、何でか無いね。

    横にいるノボリを見ると、僕と全く同じ動作をしている。………うん、君も無いね。


    「なんでこんな時まで、双子でリンクしてるんですかっ?!!」


    ノボリが叫ぶ。いつもはこれを近距離で聞くとかなり煩いが、激しい雨音で大分音量が遮られている。

    駅構内のコンビニにも向かったが、この天候のせいであろう。傘やカッパ類が売り切れるという最悪の事態だった。
    タクシー乗り場も帰路に着きたい人々が長蛇の列になっていて、直ぐに乗り込む事は無理そうだ。
    こんな事ってある???


    「もうこうなったら、しょうがないね!!よしっ距離そんなに無いし家まで走ろう!!ノボリも出発進行ーーーっ!!はははははっ」
    「ちょっ?!!クダリ待って下さいっ」


    ちょっと走れば僕らの自宅には着く。
    雨足が激しい中、ノボリは戸惑っていたが、僕らは外に走り出した。

    打ち付ける雨に、直ぐに全身がびじゃびじゃになっていく。額に垂れる雨粒を払いながら、横に追いついたノボリをちらりと見る。少し困りながらも、一生懸命な顔が愛おしい。
    走りながら、頭の中には子供の頃の思い出もまた駆け巡っていた。


    まだ僕達が小さい頃、二人でお気に入りの公園で遊んでいたら急に雨が降ってきて、雨宿り出来る遊具に駆け込んだ事があった。
    遊具の上部からぽたぽたと落ちる雨垂れを見つめながら、濡れた小さな手を二人できゅっと握りしめていた。


    「雨止まないね」
    「止まないねー」


    雨宿りをしながらした事といえば、そんな他愛もない話だったり、しりとり等だった。
    結局その時にもなかなか雨は止まずに、今みたいに外へ駆け出した。家に着いた時には、両親にこっぴどく叱られたっけ。
    二人揃えば心細さも半分。たまに喧嘩もしてきたけど、やっぱりノボリがずっと隣にいてくれて嬉しい。
    ただあの頃と違うのは、家族や兄弟としてではなくて、一人の人として、愛する人として今は君が恋しい。


    走りながらそんな風に思い出に耽っていた時、途中激しい雷が近隣の避雷針に落ちた。
    耽っていた思考が、すかさず現実に戻される。
    激しい光が当たりに広がった直後、大きな雷鳴がつんざく様に響いた。

    あっしまった。

    横で走っていたはずのノボリを見ると、少し後ろのビルの壁に項垂れる様に固まっていた。目の焦点がせわしなく動き、いつもの状態では無いのは明白だ。
    ノボリは僕より雷が苦手だ。もちろんバトルでも攻撃で雷が発生する事もあるのだが、あんな時にはバトルモードになっているのか、動揺は少ない。
    ただ、それ以外だと滅法雷に弱い。日頃、僕達は地下で仕事をしているからか、すっかり失念していた。

    急いで壁に寄りかかっているノボリに駆け寄り確認すると、顔色がかなり悪いし、四肢に力が入っていない様子だった。
    しかも呼吸はかなり苦しそうで、ひゅーひゅーと過呼吸になりかけている。


    「ノボリ!!大丈夫?!!僕ここにいるよ!!ゆっくり呼吸してっ!!」


    いつ振りだったであろうか。あの頃の様にぎゅっと手を握りしめた。
    浴び続けた雨で熱を奪われた手は冷たく、握りしめる力も今は弱弱しい。
    また、雷と打ち付ける雨の寒さのストレスで、ノボリは手も身体もカタカタと小刻みに震えている。
    このままではいけないと思い、少し雨を防げる軒下を見つけ、ノボリを引っ張っていく。
    ゆっくりゆっくり、なるべく落ち着く様に優しく声をかけていく。
    そのお陰か、ノボリは徐々に落ち着きを取り戻していった。


    「はぁはぁ…、ふぅ…。うん。もう大丈夫ですよクダリ。すみません、心配をかけましたね」
    「本当にもう大丈夫?」


    ノボリは大分顔色も良くなってきたし、呼吸も落ち着いてきた。多分、大丈夫なのは間違いではないだろう。
    僕は心からほっとした。


    「えぇ、大丈夫です。さぁこんな夜です。早く帰りましょう」
    「う、うんっ!帰ろう」


    バトル同様、落ち着きさえ取り戻せばノボリは強い。
    ちょっと切り替えの早さに面食らってしまったが、ノボリが元に近い状態になっていてくれて嬉しい。
    それからはさっきほどの全力疾走ではないが、また二人で家まで走った。
    途中コンビニもあったが、もう二人共こんなにずぶ濡れになってしまってはもう入る気分にもなれなかった。ノボリを見ても、その気は無いらしい。
    どうせもう少しで家に着くしね。
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