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    こないだのレ×ラの続きです

    【レ×ラ】弟の困惑 中学校の休み時間。彼女は空き教室にラッキーを連れ込んだ。
     変なことはしなかったし、普通におしゃべりをしていた。
     しかし何故か彼女はラッキーの膝に乗り、我が物面で話を続けたのだ。

     漠然と、これが他人に求められる自分なんだと思い至った。
     その時、彼女の制汗剤や柔軟剤の匂いよりも、埃臭さが鼻についた。

     レイジロウの息が顔から離れ、胸にくすぐったい温もりが乗ってくる。
     勝手にベッドに侵入しておきながら添い寝をねだるレイジロウに、うんとかいいよと言った気がする。
     眠りこけるレイジロウをよそに、ラッキーの目は冴えきってしまったけれど。


     あの日から、レイジロウのブラコンがますます強烈になった。
     まず、スキンシップにとんでもないレパートリーが加わったのである。

    「ラッキー、ん……」
    「いやあの、人見てるから……」
    「じゃあ二人の時ならいいの?」

     通りかかった中年男性が、二人を見てぎょっとしている。
     そりゃそうだ。高校生にもなる男同士が頬にキスをしていちゃついているのだから。

    「僕、最近ラッキーがすんごく可愛いんだよ。これが本当の兄の喜びなんだね」

     最早ブラコンを通り越したのでは……と考えもしたラッキー。
     だが本人がこう言うし、疑っても良いことはないだろう。
     寝込みの唇にキスをされたのは、まぁ、忘れておく。

    「今回はちょっと長く居られるんだ。だからその……」

     レイジロウが、急にもじもじする。

    「ラッキーも僕の部屋にしばらく住まない!?」
    「えっ」
    「大丈夫、ラッキーの学校から近い所を選んだし、なんなら送迎も使って!」

     レイジロウがこうなったのは自分にも原因があると、ラッキーは責任を感じていた。
     だから普通の兄弟らしい距離感を心がけようと、今日レイジロウに会う前に気合いを入れて来たのだ。

    「レイジロウ。俺、せっかく母ちゃんが住ませてくれてる寮だし、あまりそういうのは」
    「駄目なの?」

     レイジロウの顔がみるみる曇り、悲壮感を帯びていく。
     とはいえ、ラッキーも負けてはいられない。
     んんっ! と咳払いをして口を開いたが、レイジロウが身を乗り出してきたので閉口する。

    「僕、この為だけにコンサート頑張ったのに……!」

     泣きそうに、というか泣いていた。
     盛大に泣きわめく気配に、ラッキーは慌てふためく。
     そんなラッキーの様子を見てか、レイジロウは袖で乱暴に目を擦った。

    「うっ、ごめっ……僕、ラッキーとっ、母さんのこと、ちゃんと考えてなかったね……」
    「レイジロウ……」

     これを突き放せるほど、ラッキーは鬼にはなれなかった。
     なんてチョロいんだ俺は……と情けなくなったが、レイジロウは隣で幸せそうにラッキーの手で遊んでいる。
     子供みたいと思い、その子供みたいな兄にまんまと踊らされた間抜けさにため息をつく。
     息には笑いが混じっていて、悩むにも微妙な空気だった。


     小綺麗な室内で、ラッキーはハラハラしながら座ってレイジロウを待っていた。
     着くなり「今日は僕がご飯作るね」とキッチンに消えたレイジロウ。
     上手く説明できないが、不安を煽られる状況である。

     暫くすると、室内に香ばしい香りが漂う。何かを焦がした風でもなく、案外順調なようだ。

    「ラッキー、お待たせ~」

     レイジロウが持ってきたのは、ラッキーという文字や星のマークがケチャップで書かれたオムライスだ。
     形も良いが、とにかく大きい。

    「あれ、レイジロウのは?」
    「僕はラッキーの残ったのでいいよ。ラッキー少食だから」

     大きすぎるのを自覚していて、残すのも想定したわけだ。
     ただ、ラッキーが少食なのではなく、レイジロウが大食いなのだという訂正はしておきたい。

    「レイジロウは料理も上手なんだね。なんか食べるのがもったいないや」
    「えぇ? 食べてよ」

     レイジロウはオムライスに容赦なくスプーンを突き立て、一口大に切る。
     一口の基準が、ラッキーとは大幅にずれている。

     スプーンに山盛りのオムライスをレイジロウの手で口元に運ばれ、ムードもへったくれもなく頬張る。
     あぁ良かった、変な雰囲気にならなかったと安堵した。

    「あ、おいしー」
    「本当? 僕もお腹空いてきたな」

     スプーンはさっき、ラッキーが持たされた。

    「食、べる……?」

     皿の端にスプーンを置いてレイジロウに渡そうとする。
     レイジロウは、ラッキーの口の横を指でなぞった。

    「ついてる」

     遠ざかる指に、小さな切り傷があった。それは米粒ごとレイジロウの口に隠れた。

     食べ終わり、ソファに並んでテレビを観る。
     まさに今テレビに映ってピアノの演奏をする人物が隣に座っているなんて、貴重な体験だ。

     レイジロウ、俺は弟なんだよな……? 心の中で、ラッキーは問い質す。

     車中での手遊びなんかとは違う、手の絡み合い。
     髪を捲ってまでキスをして、下にあった筈の手がラッキーを覆って逃がさない。

     残り一週間はある同居生活を、どう乗り切るべきだろう。
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