【嫌な奴/三浦×和也】まずいピラフの朝、駅弁と車窓 妙に気怠いというか、眠気が酷かった。
どうせ和也もあと数時間は帰ってこないから、買い物を済ませておきたかったのに。気持ちに反して俺はソファーに沈む。
次に目を開けた時には、和也が一人であたふたしていた。
「……変な顔」
俺の声に反応し、和也はまじまじと顔を見てくる。こうも熱烈な視線は、そうそう浴びれるもんじゃない。
「君……名前は?」
「はぁ?」
そこで俺は、違和感に気付いた。子供の声と、手に纏わりつく鬱陶しい袖。姿見には、俺を小さくしたような子供が映っている。丁度、和也に出会った頃の俺が。
「……三浦恵一」
続けた言葉は、少しの悪戯心だった。
「なぁ、兄ちゃんだれ?」
こういうのを、鳩が豆鉄砲を喰らったような……と言うんだろうか。和也は頭を抱え、俺は笑いを堪えるのに必死だった。
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