この世界の人間はケーキ・フォーク・それ以外に分かれている。
自分は生まれてこの方それ以外――いわゆる普通に属しており、特に不都合もなく生きてきた。幸か不幸か腕っぷしがそこそこ強いため、フォークに襲われているケーキという現場に遭遇した際に数度助けたことがある程度の関わりしかない。
バイト帰りのいつもと変わらない夜、建物と建物の間の細い路地から悲鳴が聞こえ、そちらに足を向けてみれば案の定ケーキがフォークに襲われているという状況だった。慣れた拳でフォークをぶっ飛ばし、へたり込んでいたもう一人の手を取ってとりあえず路地裏から安全な大通りまで出る。暗いところから多少マシになった灯りの下でざっと見たケーキの彼は無傷のようでほっとした。
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