雫 犬飼は大量の荷物を抱えながら、プレハブをでてくるときに傘を持ってこなかったことを後悔し、肩を落としていた。今日の降水確率は低かったはずだが、予報ははずれたようだ。行きは薄く雲がかかっているくらいだったが、スーパーで色々と備品を買い込んでいるうちに本格的に降ってきていたらしい。
もう少しよわくなるまで待つか、三人のだれかに傘を持ってきてもらうよう連絡するか考えてみたが、前者はいつになるかわからないし、後者は外出許可の問題もあるがそれ以前にこんなことで来てもらうのも申し訳ないので、どちらも選択肢として除外することにした。
小雨ならまだよかったものの、この雨の中を歩いて帰るには恐らく下着までびちょびちょになることを覚悟しなければならない。さらに荷物のことも考えるとかなり憂鬱ではあったが、犬飼には溜まっている仕事が山のように待っている。
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