相対性理論は時間を全て解決するか?「相対性理論、て、あるでしょ」
「ん? うん」
危なかった。完全に気が抜けて窓の外を流れる雲を見て呆けていた。
聡実くんは時折、前後の文脈なんてまるで無視して、話が変わる枕詞なんかも完全に無視して、会話をはじめるきらいがある。たまに上手に受け身がとれず拾い損ねてしまうこともあったけれど、今回はすんでのところで間に合った。
うまくいかなかった時にはもちろん謝るが、その度に聡実くんはどうしてちゃんと聞いていないのかと言わんばかりにじっと恨めしそうな目でこちらを見つめる。
自分の話は全て聞いているのが当然とでも言いたげなその反応は、可愛い。しかし同時にそれは驕りと甘えの現れ以外の何物でもないことに、聡実くんは気がついているだろうか。いや、気がついているはずがない。そうなるまで聡実くんへの対応を、気づかれずに積み重ねてきた自負がある。
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