老いた木場修太郎の手記(一)「毒物だと…?」
長い付き合いの幼馴染から、動揺を感じた。
電話口にでたとき、無性に苛立っている
様子だったが、今は愕然としている。
「ああ、あの住込みの信者が入手に関わった
のがわれてな。ありゃあ拝み屋の犬
なんだろう、前の件で察しはついてる」
「前の件とは、なんだ?」
お前が帰ってくるひと月前ぐらいか、
使い込まれた手帳を捲り、受話器を持ち直す。
「どうやらあそこは畜産精肉関係者を信者で
固めて豚だか牛だか鶏の…生き血を毎日
一定量横流しさせてたらしくてな。
しかし、この1年でその信者がだいぶ
抜けたらしい。だから今迄受付窓口だった
住込みが貰いに回っていた。それを、
サツにタレこんだ奴がいたんだよ」
「そんな話は、京極から聞いていない」
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