青峰っちに内緒で子供を産んだ黄瀬の話 常にまとわりつく倦怠感、原因不明の微熱、突然襲ってくる吐き気と嘔吐で体力は削られるばかりだった。理性だけでは抗えないほどの眠気があって、自分の体なのに、ままならないことばかり。
不安ばかりが煽られて、あっという間に一ヶ月経った。満開の桜は見損ねた。外を見るより、ベッドに横になっている方が多かったから。視界に入るのは青空じゃなく、部屋の無機質な壁か、天井か。
食事がまともに摂れなくて、やむなく病院で点滴を受けると多少はマシになるが、その効果も長くは持続しない。タオルを口元にあてて、ふうふうと浅く息を吐く。ぎゅ、と握った手は情けなく震えていた。
何が不安なのか、悲しいのか、辛いのか。もうよくわからない。生温い雫が、ポロポロと勝手に瞳から溢れてくる。ああ、貴重な水分なのに、とどこか他人事のように思った。
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