光を見た。
真昼の太陽すら届かないビルとビルの隙間、煤まみれの薄汚れた場所で、生まれて初めての、光を。
「君、とっても綺麗だね」
「……?」
「どこ向いてるの?君のことだよ!君!」
綺麗だなんて、はじめは何を言われているのか分からなかった。まさか自分のことだとは思わないカカワーシャは、後ろを振り向いて灰色の壁におでこをぶつける。危ないよ!突然現れた少女は躊躇なく少年の肩を掴み手前へと引き寄せた。その時にズレたフードの下から覗く宝石のような瞳が、暗闇に慣れきったカカワーシャの目を奪う。
「きれい……」
瞳だけではない。埃やコンクリートの白色とは比べ物にならないほど美しいシルバーブロンドの艶やかな髪も、清く健康的な玉肌も、小さな口から紡がれる鈴のような声も、その全てが、綺麗で。
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