閃け稲妻 龍爪の先に大正13年秋。気付けば金塊争奪戦争から17年の歳月が流れていた。
「そういえば、手紙が届きましたよ、聯隊長殿」
官舎に帰宅し、軍服から着流しに着替えた鯉登音之進中佐に、海松茶色の長着姿の男が、二通の封書を差し出した。
「あいがと、月島」
茶の間に落ち着き、封書を受け取ると、さっそく差出人を確認する。
一通は、阿仁の谷垣源次郎からであった。
「ほう……15人目が産まれたそうだぞ、月島ぁ。男児だそうだ」
「それはまた……ということは、おなごはあの時の一人だけですね」
月島は、卓袱台に茶を注いだ湯呑みを置く。
「そうなるな。インカラマッも気ばったものだなぁ。祝いと、あわせてインカラマッにも何か贈ってやろう」
「それが宜しいかと。では……」
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