「留守番を頼めるかい?」
仕事で出掛けなくてはいけなくてね、と目の前の彼──八尋さんはそう続ける。
こういうことはそう珍しくない。特に疑問に思うこともなく、二つ返事で了承した。
*
「さて、何から手をつけるか……」
彼が外出したのを見届けた後、私は逡巡していた。
私が事務所にいてやることといえば一つ。家事である。
八尋さんの生活能力は、言葉を選ばず言うのであれば類を見ない酷さだ。私が雇われる前、よくもまぁ1人で生活していたなと逆に感心してしまう。
助手として雇われたはずなのに、気がつけば家政婦みたいになっている。まぁ、探偵業で私が役に立てることなんて特にないから良いんだけど。
「あ、でもこの前の猫探しのポスターは私が作ったっけ……」
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