未だ遠い恋の唄 どこか遠くでポロンときれいな音がこぼれ落ちた。辿々しく始まったその音は、いつしか和音を奏でると高く駆け上がり、初冬の校舎に響きはじめる。
モニカは先月分の報告書を捲りながら、無意識に耳を澄ませた。
初冬の晴れた日の午後。生徒会室の大きなガラス窓は表面積いっぱいに陽射しを取り込み、舞い上がった埃をキラキラと輝かせた。
暖炉に火を入れなくとも室内は暖かく、蝋燭を用意せずとも手元は眩しいほどに明るい。
生徒会の面々は今は部屋に居ない。職員室に赴いたフェリクスとシリルはもう少しかかるだろう。今日は職員への報告以外にこれと言った用事がなく、会長と副会長以外は各々の細かい仕事に出掛けていた。
そんな中、モニカだけは今月の会計報告書のために生徒会室に居座り先月の書類の見直しを行なっている。
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