怪盗と騎士について────
『せりや、どこだ?』
幼子は道に迷っていた。
共に歩いていた友人とはいつの間にか逸れてしまい、小さい身体は大人達の波に呑まれていった。
『そんなところで如何したんです、お嬢さん?』
道の端に蹲って泣きそうな顔を隠していた幼子に、一人の青年が話しかけた。
幼子が声に驚いたように顔を上げると、青年はふわりと優しく笑ってみせた。
『…私は男だから、お嬢さんではないぞ』
『おや、失敬。俺のお客様は老若男女みな“お嬢さん”と呼んでいるんだ』
『お客様?』
『ああ。俺はマジシャンの見習いなんだ』
『マジシャン…?じゃあ、マジックができるのか!?』
『勿論。例えばこんなふうに、俺の持っている赤い花を…こう!』
そう言って青年がパチリと指を鳴らせば、赤だった花の色は黄に変わった。
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