地面を灼くほどの強い日差しは、数メートル先を歪ませる陽炎を生み出して、それに健気に呼応する何処かの虫の鳴き声は人だかりの喧騒に掻き消される。数ヶ月振りのアカフラは相変わらず暑かった。
使い古された、出涸らしの敷物にどかと腰を下ろしたアダクリス人達が慣れた様子で客寄せを行い、大勢の人々は珍妙な物品達を見ては、懐からこれまた奇妙な物を取り出してそれぞれを交互に指差している。
そんな熱気に包まれた人々の中で唯一人、ロドスのドクターは鬱屈そうな顔色で大木の木陰に身を寄せていた。
「クロワッサン、まだ終わらないのか?」
「ちょっと待っとってな旦那さん、このおっちゃん中々手強いねん!」
明るいオレンジの髪を揺らしてクロワッサンはドクターに手の平を向けた。
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