今年もよろしくお願いします「ねえ、お母さんからみかん持ってけって言われたんだけど」
昼寝用に顔に乗せていた雑誌がばさりと音を立てて床に落ちる。あー寒い寒い、と言いながら、ベイン家二番目の姉がこたつ布団を大きく開いた。外気にさらけ出された足が思い切り冷えたので、ブラッドリーは長い足を折りたたんだ。大学を出た後、遠くに引っ越した一番上の姉と違い、家は出たが隣県に住んでいる姉は、時折こうして顔を出す。
言われたから、どうだと言うのだ。無視を決め込んで体を背けると、無視すんな、と足を蹴られる。生まれ持った長い足も、こういうときは考え物だ。
「玄関のどっかにあったろ」
「なかったもん」
「じゃあ誰かが食ったんだよ、知らなかったかもしれねえが、食い物は食ったら無くなるんだ。残念だったな」
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