焚火町と街の中間地点で野宿をするのも慣れた。夜番は寝静まった深夜帯を担うことが多い。横たわったところでどうせ眠れないのだから。
「……交代」
寝返りを繰り返し、寝つけていないのを彼は分かっているのだろうか。それを噯にも出さず、今気づいたところだという風に顔を上げた。
「ああ、そんな時間か。すまない…もう少し待ってくれ。キリのいいとこまで書き上げたい」
男は、書き物をしていた。義手の利き腕をはじめ、身体の多くに機械的な特徴を持つ背高の男の顔が暗闇の中でぼんやりと浮かぶ。横顔が非常に穏やかに見えた。
男は石の上に腰を掛け、器用に膝の上でノートを広げている。手元を照らしているのは目の前で揺れる小さな火だけだった。手元を照らすには心許ない。
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