キニシテナイ見知らぬ土地で起きた出来事を振り返り、言語化する作業は何度繰り返しても大変な労力を消耗する。カルデアの優秀なサポートツールは自分の拙い英語力を卒なく補ってくれるが、表現の部分に関してはどうにもならない。自分の目で見て感じたことを感情を客観的に書き起こすのが苦手なのは、きっと自ら体験した出来事を感情と切り離すことを無意識に拒んでいるからなのかもしれないと思った。
白紙化した地球を探索しかつて切り捨てた筈の線を再び断ち切るような任務に苦痛を感じなかったと言えば嘘になる。それでもこの目で見聞きしたことを記録するのは、カルデアのマスターの大切な役目の一つだ。マシュが同行している時は彼女もレポートを作成してくれるので多少は肩の荷が下りるが、今書いているこれはどうにかして自力で書くしかないのだと、何度目かの溜息を零す。
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