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    はじめ

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    はじめ

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    事後の大人面あた

    ワードパレット
    スマートに/包容力/彼シャツ
    を使って書きました

    #面あた
    face
    ##大人面あた

    gap 社長って素敵よね。と、女性社員が噂をしている場面に出くわしてしまうことがこれまでに何度もあった。例えば給湯室とか、エレベーターホールとか、朝礼の直後とか。
     別に盗み聞きするつもりは更々ないが、やれハンサムだやれ紳士的だと面堂が誉めそやされるのを間近で聞くのも癪に障る。だからいつも、それとなく聞き耳を立てつつ様子を伺う。
    「今日の会議もかっこよかったわ」
    「あのスーツ、初めて見たけどお似合いだった」
    「一度で良いからデートしたいわ」
    「私もよ」
     なんじゃいそりゃ。デートならおれがなんぼでもするっていうのに。今日も今日とてそれはそれは賞賛の嵐だったので、辟易とした気分でその場ー今日はエレベーターホールだったーをあとにした。
     しんと静かな踊り場をひとり歩く。エレベーターを諦めたおかげで階段を使う羽目になったじゃないか。ちぇっと舌打ちを散らしながら、手すりに手を掛ける。ひんやりと冷えた鉄製のそれを握り締めた瞬間に昨夜の営みが何故かフラッシュバックした。
     清潔感のある端正な男が、ベッドの上では切羽詰まった顔でときに性急な手つきで酷く熱っぽく男を抱くなんて、誰も知らないんだろうな。
     この気持ちは優越感か落胆か。はたまた両方か。
     
     くしゅん、とくしゃみをすれば、面堂がしんそこ怪訝な顔をした。
     日付が変わったことさえ気付かないほど、愛に耽ったあとにしては、いささか不躾な態度にも関わらず、たぶんおそらく、これくらい雑な方がちょうど良い。
    「冷えてもうた」
    「服を着んか、服を、見てるこっちが寒い」
    「脱がせたのはそっちじゃろ。そこに落ちてるから取ってくれよ」
    「なんでぼくが」
    「生憎おれは動きたくても動けんのじゃ」
     いったい誰のせいだろうね、面堂くん。含みたっぷりに笑ってやると、面堂が不貞腐れたように唇を食む。その顔を結構楽しみにしていることはひとまず秘密にして、一人きりになったベッドで悠々と体を伸ばした。さんざん喘がされたために声は枯れ、起き上がる元気もなかった。奥の方で鈍く軋む腰。喉が渇いている。水が飲みたい。
     ふと視線を彷徨わせると、ちょうどミネラルウォーターに口をつける面堂と瞳がかち合った。乱れたベッドを一人降り、備え付けられた冷蔵庫の前にいる。常夜灯だけの室内にも、ずいぶんと慣れた様子だった。
    「お前だけ狡いぞ」
     恨めしい気持ちで身じろいで睨みつけると、面堂が盛大にため息をつく。生まれたまんまの格好ではさすがに寒い。
    「…ああもう、きみってやつは」
     ひとまずこれでも着とけ。乱暴に投げつけられたシャツは面堂のものだった。ちょうど真正面に飛び込んでくるので顔で受け止め、すんと匂いを嗅ぐ。やわらかなシャツはきちんとアイロンが利いていて、面堂の匂いがした。
    「…お前な、もっと渡し方あるだろ」
    「きみにはこれで充分だ」
    「なんちゅうやっちゃ」
     ああ言えば、こう言う。どこが素敵だ、どこが紳士的だ。なんて思いつつも、ひとまずは寒さをしのぐために、面堂から渡されたシャツを羽織った。もっとスマートに手渡せんかね。とはいえ、あたるは知っている。態度も言葉も乱暴なわりに、素肌に触れるときや抱くときだけは、恥ずかしいほどに優しくなる手つきを。だからこそ、癖になったし、堪らなかった。さんざんしたのに、もうさみしくて、近くにいるのに、この距離ですら、ひどくもどかしい。
     シャツを羽織る寸前、指先がうなじや肩に付けられた食み痕に触れた。情事の際に噛まれた箇所がじくじくと痛む。腹の奥がきゅんと疼いて、不意に、ああ、なるほど、なんて、合点がいった。
    「…自分でつけておいて、真っ直ぐに見られないとはどういう了見じゃ」
    「なんの話だ」
    「照れるなんて、大人げないぞ」
     それにしてはちょっと横柄すぎないか。くつくつと喉奥から笑みがこぼれた。ねえ終ちゃん、と甘えると、その名で呼ぶなと間髪入れずに怒られた。
    「貴様に甘えられると虫唾が走る」
     うそつけ。好きなくせに。
    「お前な、責任とれよ」
    「なんの責任だ」
    「最後まで、見届ける責任じゃ」
     満更でもない気分で、ベッド脇のローテーブルの灰皿に手を伸ばす。灰皿に擦り付けられた煙草はまだ半分ほど残っていた。ルーティンなのか、体を重ねたあとに必ず吸う、面堂が残したものだ。気になったものはとりあえず口に含みたくなるので、まだ紫煙の残る折れ曲がった煙草の先に口をつける。
     すう、と軽く息を吸えば、苦みが口内を駆け巡る。けほ、と咳き込むと、なにしてるんだ、と面堂が呆れた。
    「なにって、味見」
    「味見だと?」
     いつの間にかベッドに端に腰掛けた面堂に、手にしていた煙草を奪い取られる。面堂が水を口に含む。そのあと、じゅっと銀の灰皿に押し付けるのを、キスの隙間から確かめた。
    「あ、んっ…」
     あむ、とかたちのよい大きな唇で塞がれ、抱き寄せられ、ひんやりとした液体を注ぎ込まれる。それが水だということに、腰を撫でられながら気付く。
    「…っ、んっ、っ…」
    「…んぐ…んっ…」
    「はあっ…んっ…んっあ…」
     いきなり何すんじゃい、と押し返そうとしたが、脳が痺れてそれどころじゃなかった。飲みきれず、口元から零れる液体を手の甲でふき取りながら、至近距離で睨み合う。一触即発の雰囲気のなかでも、獰猛な瞳に見つめられて堪らなくなった。押し倒されて、またキス。両脚でしがみ付き、腰を擦り付けると、面堂がアホと窘める。そのまま、着たばかりのいわゆる彼シャツを脱がされた。
    「喉が渇いたって言ったのは君だろ」
    「もっと、あるじゃろ、ん、はぁっ…」
     あたるの肌に浮かぶキスマーク、ひとつひとつに口を付けながら、面堂が苦悩の表情を浮かべる。ベッドに押し倒され、絡めた手をシーツに縫い付けられた。吐息と嬌声交じりに不覚にも興奮した。
    「…着せたり、脱がせたり、忙しないやっちゃな」
    「…それが出来るのも、ぼくだけだろ」
     大人の余裕を持って鷹揚に笑うので、ちょっとどきっとした。ときおり見せる包容力は、年齢を重ねた証だろうか。出会ったころは微塵も余裕を感じなかったのに。そのまま、骨が軋むほどに抱き締められた。ぐしゃぐしゃにうねった後頭部をかき撫ぜられ、鼓膜にキスを落とす。耳のおうとつを舐め上げられて、上擦った声も漏れた。
     ああ、なんて乱暴なやつ。
     それでも。
     スマートじゃなくても紳士的じゃなくても良い。煌めくような華やかさなんて、はなからお前に求めてない。等身大の馬鹿で良い。その間抜け面に、少なからず救われているのだから。

     あたるのなかで、面堂が動いて、ゆっくりと激しいを繰り返しながら、営みを繰り返す。馬鹿みたいに気持ち良かった。
    「…面堂」
     腰を揺らしながら名前を呼ぶと、面堂がなんだ、と眉を寄せる。こめかみに口をつけながら、ふるふると首を横に振る。
    「…やっぱり、なんでもないわ」
     そう言って、耳のすぐ後ろで吐息を漏らし、素肌を密着させながら心より願う。異性相手にはとうてい出来ないような激しさで、もっともっと強く抱いて。
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    名前を呼べばすっ飛んで来る関係。

    あたるくんの「面堂のばっきゃろーっ」を受けて0.1秒ですっ飛んでくる面堂くんも、呼べばすぐに来るって分かってる確信犯なあたるくんも大好きです。
    恋より淡い 校庭の木々の葉はすっかり落ちて、いかにも「冬が来ました」という様相をしていた。重く沈んだ厚ぼったい雲は今にも雪が降り出しそうで、頬を撫でる空気はひどく冷たい。
     期末テストを終えたあとの終業式までを待つ期間というのは、すぐそこまでやってきている冬休みに気を取られ、心がそわそわして落ち着かなかった。
    「――なに見てるんだ?」
     教室の窓から校庭を見下ろしていると、後ろから声を掛けられた。振り向かなくても声で誰か分かった。べつに、と一言短く言ってあしらうも、あたるにのしかかるコースケは意に介さない。
    「…あ、面堂のやつじゃねえか」
     校庭の中央には見える面堂の姿を目敏く捉え、やたらと姿勢の良いぴんと伸びた清潔な背中を顎でしゃくる。誰と話してるんだ、などと独り言を呟きつつ、あたるの肩にのしかかるようにして窓の桟に手を掛けている。そのまま窓の外の方へと身を乗り出すので危なっかしいたらありゃしなかったが、落ちたら落ちたときだ。
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    「僕が呼んだのはお前じゃなくてラムさんだ!」
    「え~? でも招待状ここにあるよぉ?」
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    「ええい、大方お前が奪い取ったんだろう!」
    「いやいや、俺の机に置いてあったし。面堂くんったら大胆ね!」
    「違う違ぁう! 甘えた声を出すんじゃない、気色悪い!」
     降りかかってくる刀をひょいとよけ、笑えるほどふかふかのソファで寝返りを繰り返す。面堂の攻撃をかわしながら、テーブルに置かれたクッキーを器用に頬張ると、ドアのあたりで面堂の部下たちが拍手を寄越した。あたるに言わせればあほの集まりだが、こうして手放しに褒められると悪い気はしない。声援に応えながら、ひょいひょいと攻撃をかわす。
    1970