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    ゆき📚

    ひっそりと文字書きしてる

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    ゆき📚

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    【血界】【行き先は自由】Ⅱ
    のそのそ書いています。もっと推しにただただ会話させたい。意味も無く会話する推し大好き!
    相変わらず設定とか諸々雑です。書きたいように書いてます。
    大丈夫、どんなものでもどんとこい!という心の広い方がいらっしゃたらよかったら読んでやってください。

    ##BBB
    ##STLO

    【行き先は自由】Ⅱ その花はどんな花を咲かすのか
     知りたいのなら、まずは話の花を咲かせないと
     
     【行き先は自由】 Act.2 机上の空論

     イスに座ってみるとテーブルの上にどんと鎮座するキージュエリアにスティーブンの顔がかぶって見えなかったのでレオはイスをキッチン側へと寄せて座りなおせば気だるそうに座って足を組むスティーブンが今度はしっかりと見えた。
     「さて、じゃあ何について話そうか少年」
     そう言って自分のほうを見ながら笑顔を見せるスティーブンにレオは背すじが少し冷たくなるような感覚がしてぶるりと小さく体を震わした。
     そういやこの人徹夜明けだった!
     レオは思い出しスティーブンの姿を改めて見る。触るとざらざらしてそうな無精ひげに目の下のくまが疲労を感じさせる。
     おととい事務所に行った時にはすでに机にかじりついていたので単純にそのままぶっ通しで作業していたとなると二徹以上はしている可能性はざらにある。この人にとっては二日ぐらいの徹夜は軽いもんだとか言いそうだが。
     レオはそんな事を考えながらスティーブンさんが仕事している間自分はザップさんとゲームをしていたなぁなんて事を思い出して少しばつが悪くなった。
     「眠くないですか?」
     「え?あぁ、大丈夫だよ。このくらい」
     「少し休みませんか?」
     「ここで?」
     「さっき一応調べて特に変な所なかったじゃないですか外に出られないってだけで」
     「それでも充分だと思うけど」
     「確かに、そうですけど」
     そう言って何言い淀むレオをスティーブンはちらりと見て
     「そんなに僕の今の顔はひどいかな?」
     そう言って背もたれに重心を動かしたスティーブンの問いかけにレオはどう答えようかと一瞬考え正直に「そうっすね」と言葉にした。
     「まぁ自覚はしてる。ひげも半端に伸びてるしおそらくくまもできてる」
     そう言ってスティーブンは自分の顎を感触を確かめるように指でなぞる。
     「だったら少し―」
     「顔洗ってくるよ。少し待ってて」
     そう言ってスティーブンは立ち上がるとサニタリールームのほうへとそそくさと行ってしまったのでレオはリビングにひとり残される形になった。
     離れた場所でくぐもった他人が作業する音が耳に届く。思えばここはとても静かな空間だとレオは思った。
     自分が不用意に触らなければ今頃スティーブンさんは仮眠室で休んで家に帰れただろうに、ふとそんな事を考えると申し訳ない気がしてレオは小さく息を吐いた。
     視界の中に入ったキージュエリアをぼんやりと見つめる。
     クラウスさんが譲り受けた植物―という事はクラウスさんがもしかしたら異変に気が付いてくれるかもしれない。しかし外からの救助方法はあるのだろうか。その辺をもう一度スマホで調べて
     レオはそう考えてもう一度スマホを手に持ち検索アプリを立ち上げようとした。
     「‥‥ん?」
     タップに反応がない。レオはもう一度、もう一度と何度かアイコンをタップしてみるが反応は全くなく思わず「なんでだッ」と強めの独り言が出た。
     「どうした少年」
     聞こえたスティーブンの声に視線を上げると顔を洗い、無精ひげも剃ってすっきりしたスティーブンと目が合った。前髪の毛先が水で濡れてしっとりとしている。
     「あの、なんかさっき開けてたアプリが開かなくなってて」
     「なんだと?」
     レオの言葉にスティーブンも自分のスマホを取り出して操作をしてみれば確かに反応は無く
     「……原因は不明だが、完全にシャットアウトされた可能性が高いな」
     スティーブンの言葉にレオはあわわと口を半開きにしたような状態で
     「さっきまでは使えてたのに」
     「この植物が意図してやっているのかどうかわからないが」
     「そんな事できるんすか?」
     「さぁな、ただこれで僕らがここから脱出するには話をする事一択になったというわけだ」
     スティーブンはそう言うとイスにどかっと座って足を組んだ。
     「すいません…」
     「そんな風に謝るな最初に言っただろ。今回の事は僕にだって非がある」
     「いや、でも」
     「これ以上引きずるな。早く脱出したいなら話だ」
     言い切ったスティーブンにレオはほんの少し気持ちが萎縮する感覚に肩をこわばらせた。
     そんな様子にスティーブンは内心でため息をついて前髪をくしゃりと掻くような仕草を見せると
     「すまん、言い方がきつかった」
     「いえ」
     「君の言う通り徹夜明けが効いてるのかもな」
     「睡眠は大事っすよ」
     「わかってる」
     スティーブンはそう言いながら背もたれに寄りかかると顔を天井へと向けた。
     真っ白で柄も何もない天井を見つめながらスティーブンは目を細める。
     「君は最近眠れてる?」
     不意に問いかけてきたスティーブンにレオは少し考えて
     「一応、寝れてるほうだと思います」
     「最近ゲームしてないのか」
     「してはいますけど、ザップさんのレベル上げ待ちみたいな所があるんで」
     「楽しいか?」
     「ゲーム興味あるんですか?」
     「いや、単純に君が楽しんでるかどうか知りたい」
     「そりゃ、まぁ楽しいですよ。好きですから」
     レオの答えにスティーブンは黙ったまま
     天井に顔を向けたまま動かないのでレオはなんだか不安になって静かに名前を呼んでみた。
     「スティーブンさん?」
     レオの呼ぶ声にゆっくりと顔を正面へ戻し自分と視線が合うと小さく微笑んだスティーブンにレオはどういう感情の顔なのかわかりかねた。
     「顔洗ったら気分がすっきりした」
     「そう、ですか」
     そんな風には見えないけれどこれ以上そこを追及しても大丈夫だとかなんとか言ってはぐらかすのだろう
     この人はそういう所がある。
     レオはそんな事を思いながら自分もイスの背もたれに寄りかかる。
     「さっき洗面所に行ったらご丁寧に必要なものがひと通り揃っていたよ。冷蔵庫にも二人で食べるには充分な程食料が入ってたし」
     「いつそんなの見てたんですか」
     「さっき二人でいろいろ調べただろう。窓や入口を探す為だったがそれ以外の場所にも注意をはらうようにしといたほうがいいぞ」
     思わずな所でスティーブンからの忠告にレオは「うぃっす」と小さく頭を下げるような仕草をして見せた。
     「ここまで話して植物には特に変化なし、か。思った以上に長期戦になるかもしれないな」
     「長期戦って、どのくらい」
     「さぁな、この植物次第って所があるんじゃないか。君明日はバイト入ってるのか?」
     「はい。午後からですけど」
     「そうか」
     スティーブンはそう言うとしばし間を開けて
     「まぁ諦めない気持ちは強く持っていこう!」
     「他人の事だからって投げましたね!?」
     
     ***
     
     この場所で休むなんてと難色を示すような事を言っていたスティーブンだったが自分が思っている以上に疲労は溜まっており体は抗えずというか抗うのもなんだかばかばかしくなってきてイスからふらりと立ち上がった。
     「スティーブンさん?」
     「ちょっとそこのソファに横になる」
     そう言ってゆっくりと歩いてリビングにある白いソファにぽすんとレオに足を向ける形で仰向けになった。
     見た目よりも柔らかく自分を受け入れたソファにスティーブンは自然と息を吐いて体を沈めて目を閉じる。
     「大丈夫ですか?」
     「あぁ、横になってるだけで全然違うから」
     そう答えるスティーブンの姿をイスに座ったまま体の向きを変えてレオは眺める。
     テーブルに左腕をのせながら休憩を邪魔してはいけないとレオは何も喋らず
     とても静かな時間だ。とレオは思いながらキージュエリアに視線を動かす。
     特に動くでもないただ見ている分には葉っぱに代わった形を持っている異界の植物―
     「もしかして僕に気を使ってる?」
     不意に聞こえた声にレオはぴくっと反応してソファのほうへと視線を向けた。
     先程見ていた時と変化なく横になったまま動かないスティーブンの姿に「まぁ」と曖昧に答えると小さく笑う声が聞こえて
     「眠るつもりは無いから何か喋ってくれないか?」
     「え、でも」
     「今の状態を早く抜け出すためには君と会話しないと」
     スティーブンの言葉にレオは確かにそうだがそんなに急がなくてもとも思った。が口には出さなかった。
     自分よりもずっとこの人は忙しい日々を過ごしている。そんなのよくわかっている事だ。
     こんな所で時間を無駄に過ごしている暇など無いのだろう。
     レオはそんな風に思いながらもそれでも
     「確かに優先すべきことですけどその前に優先すべきはスティーブンさんの体調回復です」
     「別に体調が悪いわけじゃないよ」
     「睡眠不足は立派な体調不良への一歩ですよ」
     レオがそう言い切るとスティーブンはひとつ間を開けて「なるほど」とだけ言うと黙ってしまったのでレオは怒ったのだろうかと緊張する。
     「なぁ少年、ちょっとイス持ってこっち来てくれないか」
     そう言われレオは戸惑いながらも言われたように立ち上がると座っていたイスを抱えてスティーブンが横になっているソファの元へと歩み寄った。
     「もうちょっとこっち」
     そう言われレオはスティーブンの腰元あたりにイスをソファと向かい合うように置かされるとそこに座るよう言われたのでレオは素直に座ったが一体どういう状況なんだコレ?と戸惑った。
     「そこにいて」
     「はぁ…えっと」
     スティーブンはうっすらと目を開けて視線をレオに向ければ戸惑いを隠せていないまま言われ通りイスに座っている姿にふふっと静かに笑みをこぼすと深呼吸をひとつ。
     「遠くで見られているより近くにいてもらったほうがなんか安心するから」
     「そういうもんなんですか?」
     「うん」
     そう言って目を閉じるスティーブンにレオはそういうもんなのかなぁと心の中で呟いた。
     「何か話して」
     「え?休まないんですか?」
     「休むよ。今休んでる状態」
     「かたくなに眠らないつもりっすね」
     「静かな時間がイヤなんだ。君と喋ってる間に眠るかもしれないからそうなったらそっと見守っててくれ」
     「なるほど…つまり俺は今からスティーブンさんのお守りをするって事ですね」
     割と真面目に自分の考えを述べたレオをスティーブンは目を開けて確認した後短く笑って背もたれのほうへと顔を動かしてあくびをひとつした。
     「君がそのつもりなら僕も存分に君に甘えてお守りしてもらおうかな」
     ゆったりとした口調で冗談を言うスティーブンにレオも返すように
     「なんなら手でも握りましょうか?」
     その言葉にスティーブンは薄目を開けて天井を見た。無意識に、意味も無く
     「うん」
     「へ?」
     スティーブンは静かにレオのほうへと顔を向けて自分の左手をレオに差し出した。
     自分が言い出した事とはいえまさかスティーブンがのってくるとは思っていなかったレオは驚いて
     「なんだ?してくれないのか?」
     そう言って差し出した手をほらっと言った感じでレオの前でもう一度揺らして見せるスティーブンにレオは引っ込みがつかなくなってしまったなぁと思いながら自分も右手を伸ばすとスティーブンの手を握った。
     他人の手に触れる瞬間の独特の緊張感がレオの体を包んだがじわじわとそれは解けて
     「君の手、意外と冷たいな」
     「スティーブンさんの手が温かいんですよ」
     そっちのほうが意外だとレオは言葉にはせず口の中に含んだ。氷を武器とする血凍道の使い手という事もあってなんとなくイメージ的に本人も体温は高くないものなんだろうななんて思っていた。
     「なんか気持ちいいよ」
     するりとそんな事が言えるのはある意味すごい事だと思う。なんて自分は意識しすぎているのだろうかとレオは思いながら「そうですか」とシンプルに返した。
     「人って眠くなる前は体温が上がるらしいですよ」
     レオの言葉にスティーブンは目を閉じたまま口角を上げて
     「それって子供の話じゃないのか?」
     「いや大人でもそうらしいですよ」
     「ふーん」
     「まぁ普段のスティーブンさんの手がどのくらいの温度なのかわかんないでなんとも言えないですけど」
     「君、もしかして僕の事体温低そうだって思ってた?」
     「え、まぁ…ほらなんか氷のイメージあるんで」
     「それだけ?」
     「はい?」
     「冷たい人間だって思ってたんじゃない?」
     そう言ってうっすら目を開けて微笑む表情にレオはすぐに言葉が出なかった。
     「ま、上司にこんな事言われても困るだけだよな」
     そう言ってまた目を閉じるスティーブンの姿にレオはぎゅっと握っていた手に力を込めるとぴくりと反応をしたスティーブンはまたうっすらと目を開けた。
     「どうかした?」
     「いえ、少し握りなおしただけです」
     「…そう」
     だったらなんでそんな表情をする?困ったような表情の中に
     悔しそうな寂しそうな感情が見えたのは気のせいだろうか
     スティーブンはぼんやりとそんな事を思いながら自分が思った以上に睡魔に歩み寄られているのだと瞼の重さに抗えない事で感じていて
     「話をしてくれ、レオ」
     なんでもいい、君の声を聞きながら眠りたい
     なんだか無性にそう望んだ。
     
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