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    ゆき📚

    ひっそりと文字書きしてる

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    ゆき📚

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    【sngk】【ジェリーフィッシュが解ける頃】
    10周年記念キャンペーンで気が付けば落ちました。
    軽い気持ちで読んでしまったが故にアニメ見て号泣しながらハッピーを願わずにはいられないよ…
    とそんな気持ちを昇華する為にのそのそ書いてました。現パロです。予定では続きます。
    相変わらず諸々雑な感じですが
    大丈夫、どんなものでもどんとこい!な方よかったら読んでやってください

    ##sngk
    ##エレリ
    #現パロ
    parodyingTheReality

    【ジェリーフィッシュが解ける頃】 あの日の約束を叶えよう―

     
     【ジェリーフィッシュが解ける頃】

     
     大学の講義が終わった某月某日の午後―
     エレン・イェーガーは帰り道にあるとあるパン屋の軒下に立っていた。
     「まいったぁ」
     ぼそりと呟きながらその目線の先には見える範囲をすべて灰色で覆いつくされた空があった。
     そこから勢いよく降る雨にエレンは濡れて額に張り付いた前髪を手のひらでかき上げた。
     朝に見た天気予報では一日晴れだと言っていたのでエレンはそれを信じて傘を持たずに出かけてみれば、帰りにこんなずぶ濡れが待っていたとは思いもせず
     バイトも休みだから今日は早めに帰ってだらだらしようと思ったのに
     そんな風に思いながら止む気配の無い雨脚をエレンは眺める。傘を持っている者は色とりどりのそれを差しながらそれぞれに小走りに悠々に、めんどくさそうに雨の中を右へ左へ
     スニーカーの中にまで水がしみ込んでいるのがわかってエレンの顔が自然としかめっ面になる。
     あと五分…いや十分かな
     エレンは決めた時間までに雨が止まなかったら諦めて雨の中を走って帰ろうと決めた時、パン屋の扉が開いてきらんきらんとドアベルの音が鳴るのが聞こえ反射的に視線を向ければスーツを着た男が紙袋を抱えるように持って出てきた。
     開いた扉の向こうから漂うパンの香りにすんすんと鼻を小さく動かしていると出てきた男性と目が合って
     「―ッ」
     自分を見るなり驚いた様子で固まったスーツの男にエレンは何事かと戸惑っていると
     「お、まえ」
     「はい?」
     自分よりも背の低いスーツ姿の男は唇を震わして何か言おうとしたがきゅっと閉じて
     「…雨宿りか?」
     す、と急に冷静さを取り戻したかのように静かに問いかけてきた相手にエレンは内心戸惑いながらも「はい」と短く答えた。
     「そうか…すごい雨だな、急に降りだしたのか」
     言いながら軒下から向こうの世界へと男は視線を向けて目を細める。
     「少し前からですよ。通り雨のような気はするんすけどね」
     エレンがそう言うと男は小さく舌打ちをしたのでエレンは思わずガラわるッと内心でツッコんだ。
     「天気予報は一日晴れるって言ってたのに」
     「ですよね。オレもそれ信じたんですよ」
     「あ?」
     自分を見るその目つきがあまりにも凶悪でエレンは雨で濡れた寒さ以外の何かが背筋を震わすのを感じた。
     「いや、あの…」
     「……あぁすまない。この目つきは元からなんだ。怒ってなくてもそう見える」
     すぐに相手が何に対して戸惑っているのか予想が付くという事はそれだけ自覚する何かがあったという事なのだろう。
     なんてエレンは考えて、なんとなく見た目よりは悪い人ではなさそうだなと感じた。
     「そうなんすか…いやパン屋の前で雨宿りだけしてんのかよって思われてたのかなって思っちゃったり、して」
     そう言ってエレンはハハハと小さく笑いながら何言い訳みたいな事言ってんだろうと軽く凹んだ。
     「そう言うぐらいなら何か買ってくればいい。ここのパンは美味いぞ」
     「そうしたいんですけど、服も靴もびちゃびちゃでこんな状態でお店に入るのは申し訳ないんで日を改めて買いに来ます」
     「そうか」
     「さっき扉が開いた瞬間にすげぇいいパンの匂いがして、それだけでめっちゃおいしそうでした!」
     勢いよくエレンがそう言うと男は少しあっけにとられた顔をした瞬間にそっぽを向いたのでエレンはどうしたのだろうと思っていると
     「おま、ふふ―」
     え、もしかして笑ってる?
     エレンがなんとか顔を見れないかと頭を左右に揺らすように動かしてみたがそうしているうちにエレンのほうに顔を向けなおした男の表情はすっかり元に戻っていて
     なんだか悔しく思ってエレンは上頬を膨らましながら、ふとどうしてこんなにもこの人に対して意地になっているのだろうと疑問に思った。
     さっき会ったばかりの人なのに
     エレンがそんな風に思っていると不意に「おい」と声をかけられ瞬きをひとつ、
     「なんですか」
     「ん」
     目の前に差しだされたのは手のひらより少し大きめなサイズのクロワッサンで
     「やる」
     「え」
     「さっき買ってきたばっかのやつだ」
     「え、だってお、にいさんが食べる為に買ったんでしょう?」
     「あぁ、だがいつも多めに買っちまうんだ。ひとつ減ったってかまいやしねぇ」
     そう言ってほらっと手を引くつもりは無い相手の勢いと、素直な空腹感に負けてエレンはクロワッサンを受け取った。
     「あの代金、」
     「いい奢りだ」
     「でも」
     男はもう一個クロワッサンを手に取ると
     「俺もここで食う。雨宿りの間付き合え」
     男はそう言うとクロワッサンをひと口齧った。
     「ありがとう、ございます」
     エレンはお礼を言うとひと口、さくりとした生地が歯に当たって中のふわりとしたパン生地の柔らかさと香りが鼻から抜け
     「うまぁ~」
     自然と出た声にエレンの気づかない間に男は嬉しそうに目を細めて
     「すっげうまいっすね」
     「だろう?ここのクロワッサンが俺のおすすめだ」
     男はそう言うともうひと口かじろうとした寸前に何かと思い出したかのように短い声を出したのでエレンはどうかしたのかと首を傾げていると
     「写真、撮るの忘れた」
     ぼそりと聞こえた声にエレンは写真…?と不思議に思っていたがやがてそれがパンの写真を撮っているのかという己の中の予想に辿りついて
     「記念に撮ってるんすか?」
     「まぁ、そんな感じだ」
     「齧ったやつでよければ、撮ります?」
     半分冗談で言ってみた事だったが相手がじっと自分の手にあるパンを見つめた後「いいか?」とスマートフォンをスーツジャケットの内ポケットから取り出したので、戸惑いながらも
     「どんな感じで?」
     「手の上に乗せる感じで置いてくれないか」
     言われた通りエレンは自分の手のひらに端が欠けたクロワッサンをちょこんと乗せると男はスマートフォンのカメラを起動してクロワッサンに向けると数枚撮影し
     「ありがとな。食べていいぞ」
     「…いただきます」
     エレンは答えながら、なんか変わった人だなと思いながらクロワッサンをひと口。
     二人が食べきる頃には、雨はすっかり止んでいた。
     
     *****
     
     エレンには数ヶ月前から毎日見ているSNSがある。
     写真に特化したSNS・ミンスタのとある投稿者の写真を見るのがエレンの密かな楽しみで
     毎日一枚。特別綺麗とか目を引く写真を投稿しているというわけじゃない。むしろ素人丸出しという感じの写真ばかり
     どこかのビル、めずらしいオブジェ、カップに入った紅茶、どこにあるのかわからない森の写真とかもあった。
     日常の何かしらを切り取ったような一枚が一日一回文章も無くただ写真のみ更新される。
     エレンはどうしてこんなにこの人の撮る写真を毎日見にいっているのか自分でも不思議だったがいつの間にかそれは習慣のようになって
     投稿者の名前は、L
     ただそれだけで他には一切わからない。まぁSNSなんてそんなものだと思いつつ
     どんな人なのか気になるのも正直な気持ちだった。 
     
     
     某月某日、大学構内にて
     エレンは講義が終わって、昼食の為に学内にある食堂へ向かっていた。
     「エレン!」
     後ろから声を掛けられ振り向けば友人のアルミンが小走りでエレンの隣にやって来た。
     「よぉアルミン」
     「今から学食?」
     「おう、お前も?」
     「うん」
     「一緒に行くか、今日ミカサは一緒じゃないのか?」
     「何か用があるみたいですぐに来るとは言ってたよ」
     「そっか、お前今日何食う?」
     「そうだなぁ」
     アルミン・アルレルト。エレンの高校時代からの同級生でクラスも三年間同じだった。真面目で勉強家。その努力もあって常に成績は上位で、エレンはすげぇ奴だなと素直に尊敬していたがそう思わない奴もいるわけで
     見た目が中性的なのを揶揄しながら変に絡んでくる輩や単純な妬みで突っかかってくる奴をそのたびにエレンがボコボコにして返り討ちにしていた。
     
     
     学食内にて外の景色が見えるカウンター席にエレンとアルミンは並ぶように座っていた。
     昼食はエレンはチーハン乗りカレー、アルミンはオムライスにした。
     「「いただきます」」
     そう言うと二人はそれぞれに食べ始めながら、講義について、レポートについてエレンがアルミンに質問したり、バイトの愚痴を互いに言い合ったり―
     食べ終わった後も雑談しているとミカサからアルミンへ用事が長引きそうなので学食には顔を出せないと連絡が入った。
     「あいつも大変だな」
     「エレンに会いたがってたから今頃すごい顔してそう」
     「なんか用事でもあったのか?」
     「いやそういう訳じゃないけど、一日一回は会いたいみたいだよ」
     「なんだそりゃ、たまにあいつの考えてる事わかんねぇ時があるんだよな」
     頬杖を突きながら呆れたように言うエレンにアルミンは困ったように笑いで誤魔化した。
     「あ、そうだ」
     エレンは思い出して自分もスマートフォンを取り出すとミンスタのアイコンをタップした。
     「ミンスタ?」
     「おう、いっつもお昼以降に更新されるからさ」
     「飽きないねぇ」
     「まぁな、今日はどんな写真が載ってるか、それともまだ更新されてない―」
     かもと言いかけて更新されていた新しい写真を見てエレンの動きがぴたりと止まった。
     「エレン?」
     元々大きな瞳がさらに見開かれて驚きの表情を見せたまま
     「どうかしたの?」
     アルミンはアルミンでそんな状態になってしまったエレンにびっくりながら彼が持つスマートフォンの画面を覗き込んだ。
     そこには誰かの手のひらに乗ったクロワッサンの写真が表示されていて
     「これ、新しく更新された写真?」
     アルミンの問いかけに答えず代わりに勢いよく立ち上がったエレンはそのまま学食の出口へ走り出した。
     「ちょ、エレン!?」
     「悪いッオレ今日はもう帰るわッ!」
     「はァ!?おい、エレン!!」
     学食内にいた学生たちが驚きながらも風が過ぎればですぐに何事も無かったかのような中、疑問と戸惑いで固まったアルミンだけがその場に取り残されたのだった。
     
     *****
     
     あの人だ。
     エレンは大学を急いで走り出るとそのまま歩道を走り続けた。
     間違いない、あの写真
     心の中で押さえられない何かが自分を掻き立てるように
     手のひらに乗っかった。片方だけ欠けたクロワッサン。
     それはあの雨の日、エレンが出会ったスーツの男が撮っていた写真だった。
     
     
     「はぁはぁはぁはぁはぁ」
     パン屋がある通りに辿りついたエレンは息切れしながら自分が随分と突っ走った行動を起こしたのだとその時点で我に返った。
     あの日パン屋で出会ったからといってそこに行けば必ず会えるわけじゃないのに、それでも気に入ってよく買いに来てるようだったし
     そんな風に考えながらあの雨の日の翌日エレンはここにパンを買いに来た事を思い出していた。
     ドアベルが響き静かに消える音が耳に心地よく残る中、小麦のいい香りが優しく漂う店内にはいろんな種類のパンがあって
     あの人、いつも買いすぎるって言ってたけどその気持ちちょっとわかるかも
     エレンはトレーとトングを持ちながらそんな風に思って
     そして結果自身も気づけば多めにパンを買ってしまっていたのだった。
     
     
     スーツ姿だったからたぶん社会人…会えるとしたら確率は夕方以降が高いのか?
     エレンは考えを頭の中でまとめながら、完全に早とちりした自分に額を押さえて後悔した。
     「完全にトチッた」
     呟きながら時間を確認する。午後の講義には今から戻れば全然受けられる時間だったのでエレンは深呼吸をひとつ大きくするとまた帰りに来て少しここで待ってみようと心に決めて来た道を戻り始めた。
     
     
     信号が青になりそれを知らせる音が鳴る。
     人々が行き交う散り散りな靴音が響く中
     「すまないリヴァイ付き添ってもらって助かるよ」
     「かまわねぇよ、あそこの取引先には俺も前から興味があったからな」
     そう答えながらスマートフォンを見つめるリヴァイと呼ばれた男に隣の男は
     「どうかしたのか?リヴァイが歩きスマホとは」
     「あ?なんでもねぇよ」
     「そうか、ならいいんだが。その癖はそのうち直したほうがいいぞ」
     「なにがだ?」
     「その言葉の最初に、あ?って答えるの」
     「…仕事中にはやらねぇよ」
     「今も一応仕事中なんだが」
     そう言ってくすりと笑う相手にリヴァイは眉間に皺を寄せる。
     「そんな顔をするな。お前が歩きながらスマホを見るのがめずらしいと思っただけだ」
     「別に、大したことじゃねぇよ」
     そう答えながらリヴァイはスマートフォンをスーツの内ポケットにしまったが浮かない表情のままに横断歩道を渡り切って
     ふとリヴァイは渡った横断歩道を振り返ってその先に小さく見える行きつけのパン屋を見た。
     「どうかしたか?」
     「……いいや、なんでもない。行こうエルヴィン」
     リヴァイはそう返すと正面を向いて静かに歩を進めた。
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