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    ゆき📚

    ひっそりと文字書きしてる

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    ゆき📚

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    【血界】《眠れぬ夜は君のせい》
    9/20【STLO LOVE STORY】内のテーマ企画・stlo朝昼晩
    真夜中の体温をテーマにSSを書きました。
    休日前の深夜にうまいこと寝つけないスティさんとそんな彼を寝かせようとするレ君のお話
    ※基本ほのぐらい雰囲気です
    ※スティさんがマイナス思考に引っ張られてるよ
    ※大丈夫、どんなものでもどんとこいな人良かったら読んでやってください

    ##BBB
    ##STLO

    《眠れぬ夜は君のせい》 雨の音がする。
     浮上した意識の中で最初に思ったのがそれだった。
     眠気に半分以上意識が支配されている感覚にスティーブンはもう一度そのまま眠ろうとしてみるがしばらくしてゆっくりと目を開けた。
     耳に聞こえてくる水の音、どうやら結構な勢いで雨が降っているらしい。
     ふと自分の背中がひどく冷えている事に気がついてスティーブンはシーツを首元まで引っ張った。
     体温がこもるであろうシーツの中でどうしてこんなにも背中が冷えるのか一向に温まる気配の無い自分の背中にあぁやだな…とスティーブンは目を閉じて眉根を寄せた。

     こんな時には無理にでも起きたほうがいい
     頭はそう思っていても体が動こうとする気が無いのがわかった。普段の不摂生がここにきて響いているのを実感する。誰に言い訳するでもなくスティーブンは俺だって休めるものならしっかり休みたいよと口の中を力なく動かして閉じていた目をすーっと開けて室内の様子を見れば視界には暗闇しか映らず何が見えるでもないそれを確認してスティーブンはふたたび あぁ、嫌だ と心の中で呟いた。
     思ってしまったが最後とでもいうようにスティーブンの頭の中に無自覚的にイメージが湧いて流れていく。

     冷えた背中の感覚がより一層強くなる
     自分では絶対に見る事は出来ない 他人には見える場所 
     
     真っ暗な寝室のどこからともなく無数の 誰ともつかぬ闇に溶けそうな色の手が自分の背中に緩やかなスピードで迫ってくる。
     
     あぁやめてくれ
     スティーブンはそう思ってきゅっと目を閉じる。
     眉間に皺が寄り、されど映像は頭の中で流れ続けて消えない
     無数の手は尚も自分の背中に忍び寄ってひたり、ひたりとくっついてくる。
     
     あぁ つめたい
     
     ひたり
     ひたり、とその手はどんどん増えていく。
     背中だけだったそれがやがて腕から手首まで
     腿から足首まで
     染まる様に体を暗闇色に塗り潰していく
     このままお前の存在を消してやるとでもいわんばかりに
     首元にひたりと手がやってきて

     あぁ息が、きっとこの手は僕の首を絞めていく 真綿のようにやんわりと
     いやそんな生易しいものじゃないだろう
     自分が行った事に対してそんなもので許されるなんて思っていない
     わかってる
     覚悟だって ある
     自分自身が選んで 決めたんだ

     あぁ冷たい
     背中だけだった冷たさが今は体全体になっている

     きっと自分が最後の時を迎えるのだとしたらこんな感じなのだろう
     僕はこのまま暗闇に飲み込まれるように 誰に見つかるでもなく―

     
     「スティーブンさん?」
     不意に自分以外の声がして手に感じた温もりにスティーブンの体から力がふわりと抜けていく
     「大丈夫ですか?なんかうなされてるみたいでしたけど」
     「…………レオ?」
     「はい」
     スティーブンはゆっくりと目を開けてみる。さっきまで暗闇しか見えなかった世界にうっすらと揺れるシルエットがあった。
     「なんで ここに?」
     スティーブンが呟くように言うとそう言われたレオナルド・ウォッチのシルエットが「えぇ」と小さく声をあげた。
     「明日はお互い休みだから二人でゆっくり過ごしたいって言ったのはスティーブンさんじゃないですか」
     もう、と呆れたように息を吐く音にスティーブンは顔をシーツに擦りつけるようにして「そうだったっけ」とつぶやいた。
     「そうですよ、もしかしなくても今寝ぼけてますね?」
     「うん……ううん」
     「どっちなんですか」
     「レオ」
     「はい」
     自分の手を握ってくれている感覚にスティーブンはゆっくりと息を吐く
     「あったかい」
     「はい?」
     「レオの手は温かい、ずっと寒かったんだ…さむくて…」
     
     この手を離したくない
     だけど離さなければ僕の暗闇にこの子も連れて行ってしまう
     あぁ離さなければ
     愛しいならばなおさらに
     君を愛しいと思える自分でいるうちに

     「どうしたんですかスティーブンさん」
     スティーブンの頭上に優しい声色が降り注ぐともう片方のレオの手が彼の頭を優しく撫でた。
     「俺がトイレに行ってる間に怖い夢でも見たんですか?」
     「……夢じゃないかもしれない」

     あれは近い将来、自分が経験するかもしれない―

     「夜は誰だって不安になるもんですよ、スティーブンさん疲れてるんです。ゆっくり寝ましょう。明日はお休みなんですから寝坊したって誰も怒りませんよ」
     「……眠れない」
     「目を閉じていればそのうち眠くなってきます」
     「レオ」
     「はい?」
     「寒いんだ」
     離さなければと思う程に離れないでとしまい込んだ僕が叫ぶ
     「寒くて……ひとりじゃ眠れない」
     「二人ならすぐに温かくなりますよ」
     
     そう言って潜り込むように入ってきたレオがスティーブンの背中に手を伸ばし静かに触れる。
     「あったかい」
     触れている手が心地よいリズムを刻むようにとんとんと背中を優しくたたく
     「だいじょうぶですよ、スティーブンさん」
     根拠の無い言葉 だけれどそんな言葉がひどく安心できる温度に
     閉じた瞼の内側にじわりと水の膜が張って
     スティーブンはそれがこぼれないようにきゅうと瞼に力を込めた。


     end


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