黄泉の花守楽しいことが好きだ。楽しいことを探すのも好きだ。
──バイク、祭り、音楽、アイドルとして歌って踊る。
自分にとっての『楽しい』を追い求めているときは、家の柵や嫌なことを束の間、忘れられた。──己が圧倒的に孤独であるということすらも。
人間は基本的に群れで暮らす生き物だが、三毛縞斑は『楽しい』事柄があれば一人でも平気だった。
だから自分は、これからもずっと一人で生きていくんだろう。
斑がその認識を少しだけ改めたのは、春と夏の境に開催された二事務所合同ライブを終え、息が詰まるような暑さの夏をようやっと越えて迎えた秋のことだった。
「着いたぞお」
斑は軽快に走らせていた愛機を止めメットを外すと、自分のすぐ後ろに跨がった人物に声をかける。
2433