Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    明幸(日月)

    仁王2の二次創作小説置き場。縦書きと横書きがあります。めんどくさいときは横書きだけ置いています。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 😇 ☃
    POIPOI 16

    明幸(日月)

    ☆quiet follow

    (横)暗影篇終了~旭光篇開始あたりの話。オチが歴史ネタなので伝わらなかったらすみません。本作に出てくる城の名前+由来で検索かけてどうにかこうにかしてください…。※過去作再掲

    ※ゲーム本編の内容を少し改変しています。
    ※秀の字の性別は決まっていませんが藤吉郎より少し背が高いという設定があります。独白があるけど喋りません。

    ##横書き

    殿からの褒美と近江の城 美濃国、岐阜城。
     稲葉山城とよばれ斎藤家に支配されていたのは過去の話。駿河国の今川義元を桶狭間で破って以来、破竹の勢いで版図をひろげる尾張国の織田信長の軍により当主・義龍が討ち取られ斎藤家が滅亡すると、その名を改められ現在は彼らの根拠地とされている。
     今日ここではさきの戦――一乗谷いちじょうだに城で朝倉家を滅ぼし、小谷おだに城で浅井家を滅ぼした――での論功行賞ろんこうこうしょうが行われようとしていた。
    「いいか秀の字、信長様に名前を呼ばれたら、ちゃんと頭を下げるんだぞ」
     評定ひょうじょうへ向かう影がふたつ。
    「信長様が『お前には何何を与える~!』とおっしゃった後もだからな。そうやってぽけーっとしてると他の奴らに笑われちまうぞ」
     ひとつは説教をたれ、ひとつは首をかしげる。
    「ま、お前の実力を知ってて笑う奴なんざいないだろうし、そんなことする奴は俺が黙っちゃいねえけどな。まぁともかく、だ。多少は武士らしい振る舞いも覚えねえと」
     猿のようなただの人と、ただの人のような半妖。
    「じゃ、行くぞ」
     周囲からは〝秀吉〟と称されるふたり組であった。

    「ではこれより論功行賞を始める」
     居並ぶ面々を見渡しながら織田家当主・信長は彼らの座するより一段高い上座かみざ胡座あぐらをかきながら、低くよく通る声を評定の間に響かせる。
    「まずはじめに…〝秀吉〟!」
    「ははっ!」
     早速自分たちの名を呼ばれ、藤吉郎は主君に負けず劣らずの声量で返事をし平伏へいふくする。論功行賞では上げた手柄が大きい者ほど先に名を呼ばれるため、彼らの活躍はそれほどのものだったということだろう。秀千代も隣の低い背を手本にこうべを垂れる。
    「うぬらには浅井の旧領である近江今浜いまはまの地を与える」
    「は、ははっ! ありがたく存じます!」
     藤吉郎が一段と大きな声でさらに頭を低くしながら返す。額と床が接しているのか、ゴリゴリという鈍い音がきこえてくる。
    「今後も励むがよい。次―――」

    「―――これにて論功行賞をしまいとする。解散!」
    「ははっ!」
     立ち上がり扇を掲げる信長の一声を皮切りに武将たちが立ち上がり散りぢりに去ってゆく。
    「さ、俺たちも帰るか!」
     声を弾ませながら藤吉郎は秀千代の肩をゆする。秀千代はそんな彼の手を押さえながら、今にも閉じようとしているまぶたを必死に持ち上げる。
    「待て、うぬはちと残れ」
     上座から声が聞こえてくる。
    「はっ」
    「猿ではない、半妖のほうだ」
     ややとげのある声を放った主は、顔をほころばせ勘違いする藤吉郎へ向こうへいけと言いたげに手ではらう仕草をしてみせる。
    「?」
     首をかしげる秀千代へ、俺は先に出てるからと目で合図し、藤吉郎は口をとがらせながら評定の間を辞した。
     人が去り、その場に居るは秀千代と上座の男――織田信長――のみ。
     以前から、呼び出されるときも何かを与えられるときも、お叱りを受けるときも常に藤吉郎と一緒だった。秀千代にはこのように信長から個別に何かを言われるようなことをしたおぼえはない。
    「なに、そう警戒するな」
     主君からの鋭いまなざしに圧倒されてかじりじりと後ろへ足を滑らせる秀千代へ、信長は先ほどとは異なりやわらかみを帯びた声をかける。
    「うむ。いやなんだ、おぬしは何も欲しがらぬ…と思ってな」
     伸ばし始めた顎髭を撫でながら信長は、その場をぐるぐると歩き回りつつ続ける。
    「金も、武具のたぐいも、あの猿が目の色を変えて飛びつく霊石も。褒美としてやると言うても要らぬと返すばかりであろう。なんぞ…欲しい物はないのか?」
     秀千代は頭を抱えた。

     ――欲しい物は…ない。
     食料やら平時に着る服やら、ときたま酒を買う程度の金には困っていない。昔に比べれば今の暮らしは贅沢すぎると思うくらいだ。
     霊石はみなが気付かないだけでそこかしこにいくらでもある。でなければあやかしがあのように暴れまわるわけがない。
     武器に関しては、戦がひとつ終わる頃には使い物にならなくなってしまうから…高価なものも安価なものもあまり変わらない。今川義元から譲り受けた薙刀は折ってしまったし、真柄直隆から手に入れた大太刀は刃こぼれが酷くてどうにもならないとトヨに言われ処分した。かつて義龍が自分と対峙した際に使っていたこの刀もじきにだめになるだろう。柴田勝家に「もっと物を大事にせんか!」と叱られたことがあるが、いかんせん彼らとは戦っている相手が違うのだ。もしかしたら彼から貰った手斧を投擲とうてきの練習中に川へ落としてしまったことに対しての言葉かもしれないが。また、木霊からは「あたラシイ、カタナ! 前のハ、どうしタノ?」と睨むような視線を向けられたこともあり、それからは使いものにならなくなった武具は極力社に奉納するなり魑魅すだまに渡すなりしている。新しい武具の素材にできないかとトヨに相談したこともあるが、「アタシの腕がもっとよければねぇ」と謝られてしまった。防具も同じで、あやかしたちの手にかかればどれだけ着込もうが紙を破るように扱われる。煙々羅には鎧ごと体を燃やされ、一本だたらには兜ごと頭をかち割られた。重いだけ損なのでいっそのこと下着だけで戦いに出てやろうかと思ったこともある。藤吉郎と無明に止められてしまったが。
     ともあれ、秀千代にとって武具は使い捨てるものなので、信長自慢の刀であれ名も知らぬ兵士から奪った槍であれあやかしが忘れていった斧であれ目の前に立ちはだかる者を斬り倒すことさえ出来ればそれでいいのだ。だからわざわざ他人ひとから上等なものを貰うほどではない、と考えていた。
     これといった趣味もなく、藤吉郎のように愛や恋の感情を抱く異性もいない。
     ただ、ともに戦いともに笑い、死線をくぐり抜けてきた仲間たちがいればそれだけで――

     秀千代は首を横に振った。
    「やはり何もないと申すか」
     足を止めた信長がフンと冷笑を浮かべる。
    「ならば、これはどうか」
     若き織田家当主は、さきほどの論功行賞で小姓が用意した文机ふづくえの前にどっかと腰をおろした。袖をまくり、太くはないがしっかりと筋肉をつけた腕があらわになる。骨ばった手が筆を取りすずりまで運ぶと、使いきられなかった墨液が毛先に染み込んでゆく。漆黒の雫をこぼさぬよう繊細な束を白き舞台まで運び、なめらかに踊らせる。
     秀千代は、そのさまを正面に座りながらじっと見つめていた。
    『長』
     紙にはその一文字がしたためられた。書いた者の姿をあらわすかのように堂々とした煌めきをまとっていると感じられるのは、墨がまだ乾ききっていないからだろうか。
    「わかるか? 〝信長〟の〝長〟じゃ」
     向かいにす半妖と、己へも言い聞かせるかのように書をつまみ上げ信長は言を放つ。
    「秀千代のままでは恰好がつかぬであろう。長秀でも秀長でもよい、好きなようにいたせ。おぬしはそれに見合う戦働いくさばたらきをした」
     『長』の字を受け取ると、秀千代は物思いに耽るかのように俯いたまま動かなくなった。
    「嫌ならば名乗らずともよい、これはわしが好きでやっていることゆえな。褒美をことごとく断られてはぬしらのあるじとして面目が立たぬし、なによりわしが面白うない」
     言うが早いか、信長は腰を上げ扉への道を進み始めた。
    「それと市が礼を言っておったぞ。あのまま長政の後を追うはずが…と。まあ、仔細は直接け。あやつは寂しいのが嫌いでな。時折顔を見せに行ってやれ、命の恩人よ」
     秀千代が顔を上げ振り向くと、そこにはもう市の兄の姿はなかった。
     命の恩人と呼ばれた半妖はしばらくの間、手元に残された一文字を見つめていた。


     城門を出ると藤吉郎が退屈そうにぐるぐると同じところを回り続けていた。先ほどの信長も似たような動きをしていたが、藤吉郎のときだけ何故か鉄鼠を思い出してしまい、秀千代の表情は思わず臭いものを食べたときのようなそれに変わった。
    「おう秀の字! どうだった?」
     藤吉郎はこちらの姿を認めると走り寄ってきた。さながら子鼠か子猿のようである。
     そんな小動物じみた人に、あやかしと人の混血はこくりと頷くだけ。
    「ま、歩きながら話そうぜ」
     岐阜城から東近江にある藤吉郎たちの拠点までの移動は、余裕をもって途中で一泊することになっている。
    「いや~、俺たちもついにご領主様か~。しかも京や信長様のお城に近い近江ときたもんだ――」
     話を弾ませながら宿に向かって帰路を歩み始めた。

    「…で、信長様からの話ってのはなんだったんだ?」
     宿に着き、装備を解きながら藤吉郎は問う。移動中は藤吉郎が喋りっぱなしで口を挟む隙がなく、やっとかと言いたげな表情で秀千代は懐から綺麗に折りたたんだ一枚の紙を取り出す。
    「なっ…これは、信長様の?!」
     そこにしたためられた『長』の字を見るなり藤吉郎は呼吸を荒くして詰め寄る。秀千代は何も言わず首を縦に振るばかりである。
     コホンと一息つき、藤吉郎は続ける。
    「いいか秀の字、落ち着いてよぉーく聞け。武士ってのは、戦場に出て手柄を立てるとお殿様から褒美をいたたけるだろ。金銀だったり、刀だったり、茶器だったり、領地だったり。俺たちは信長様のご厚意で霊石なんかもちょこっといただいてるが…それはさておき!」
     向き合いながら秀千代の肩を叩く藤吉郎。
    「お殿様から名前をいただくってのは! とんでもなく名誉なことなんだぞ! お殿様の一門として認められたようなもの! 金や刀よりもずっと価値のあるものなんだ!」
     理解しがたいといった様子で首をかしげる秀千代。状況を理解できない己に驚いた藤吉郎が解説を加える…以前もこんなことあったな、桶狭間で今川義元を討った時だったろうか……と初めて武士として戦場に出たあの頃の記憶が掘り返された。
    「…それで、どうするんだ? これから長秀とでも名乗るつもりか?」
     まだ少し興奮気味に話す藤吉郎へ首を左右に振る秀千代。
     もの言わぬ半妖は、自身を指差し、藤吉郎を指差し、静かに頷く。
    「なんだ? もう〝秀吉〟って名前をいただいてるからいらないって?」
     この猿のような人には言いたいことが通じているのか、秀千代は口を閉じたまま首を縦に振る。ふたりでひとつの名を、と考案したのは藤吉郎であるが、『秀吉』と名付けたのは信長であった。

     ――ふたりでひとつだから、得たものもふたりで分け合いたい――

    「でも、お前だけを呼んだってことはお前だけにそれをやりたかったってことじゃないのか?」
     ばつの悪そうな顔で藤吉郎は続ける。心の中を覗いているかのような発言に驚く様子も見せず、構わないと言わんばかりに秀千代は首を左右へ動かす。
    「まったく秀の字は……あ、そうだ! いい考えがある!」
    「?」
     頭に電流を走らせる藤吉郎と、疑問符を浮かべる秀千代。
    「まああれだ、話は近江に帰ってからだ」
     そう言いながらいつの間にか小袖姿になっていた小男は手ぬぐいを首に巻きながら浴場へと向かってゆく。その姿を見失わないよう少し背の高い半妖もあとに続く。


     布団に潜りながら、秀千代は眠れないでいた。
    「……」

    「秀千代のままでは恰好がつかぬであろう」
    「お殿様から名前をいただくってのは! とんでもなく名誉なことなんだぞ!」
    「これから長秀とでも名乗るつもりか?」
    「新たな名乗りをお許しください」
    「名は秀吉とせよ」
    「なんだ? もう〝秀吉〟って名前をいただいてるからいらないって?」
    「うぬは半妖か」
    「隣りは仲間の秀の…秀千代」

    「……」

     ――『秀千代』は、藤吉郎がつけてくれた名前――

     秀千代は、眠れないでいた。頭の中を幾つもの言葉が駆けめぐっている。
     その手には、『秀』の小刀と『長』の書が握られていた。


     翌日。ふたりは行軍を再開させた。国境くにざかいをまたぐと近江国――己たちが治めることになる今浜の地――である。
    「よし、ちょっと寄り道だ」
     拠点への目印としていた茶屋のある曲がり角を通り過ぎ、藤吉郎は歩き続ける。秀千代も無言であとに続く。
     半刻ほどくと、視界の先には見渡すかぎりの青が広がった。
    「戦やら何やらでじっくり拝めてなかったからな。秀の字、ここが琵琶湖びわこだ」
     それはまるで、那古野なごやの港で見たような――
    「海じゃないぞ。湖だ」
     秀千代の心を見透かしているかのように藤吉郎が笑う。
    「湖ってのは、例えるなら、うーん……でっかい水たまりみたいなもんかな」
     下手な説明を理解してかせずか、ふーんと頷く秀千代。
    「俺はここに城を建てようと思う。湖沿いの城だ」
     大きな水たまりを背に両腕を広げながら小さな男は続ける。
    「墨俣では、上流で木を切っていかだを作って川に流して運んでたろ? 水路を使えば陸路よりも一度に多くのものを少ない人手で運べる。湖を渡る船を使ってあちこちから食べ物や服や物を運んできて、ここで作ったものは遠くへ運ぶ。物が集まる場所には人が集まる…だから、間違いなくこの町は大きくなるぜ。いや俺が、俺らがそうする」
     太陽を背に熱く語る彼の話をまぶしそうに聞く少し大きな半妖。
    「秀の字。昨日のアレ、持ってるか?」
     藤吉郎にたずねられ、頷きつつ懐から書を取り出す秀千代。それを受け取り、空高く『長』の字を掲げる男は対岸へも届かんばかりの大音声だいおんじょうで言葉を放つ。
    「今日からここ『今浜』の地を、我らが主君の名にちなみ、『長浜』と改名する!」
     自分よりも小さなはずの背が、そのときだけは何倍も大きなものに感じた。
    「これで信長様も文句は言うまいさ」
     改まってこちらを向きニヤリと笑いかける藤吉郎に、秀千代はただ口をぽかんと開けるしかなかった。
    「俺たち〝秀吉〟の〝長浜〟城! 大空に輝くでっかいお天道様への道のりはまだまだ遠いが、これは大きな一歩だ。これからも頑張ってこうぜ! 秀の字!」
     いつもの調子でポンと肩を叩いてくる藤吉郎へ、秀千代はこくんと大きく頷く。ほんのり上がった口角は、相棒でなければ見逃していただろう。
     雲ひとつない空をほしいままにする太陽の光がキラキラと湖水を輝かせていた。
     長浜城天守のに、一文字の書が飾られるのはもうすこし先の話である。


    「フン、〝秀吉〟め…」
     岐阜城天守。近習きんじゅからの報告をさかなに、城の主は黄金の盃を傾ける。
    「さて…次は何をろうか……」
     二つの瞳が空の青をうつしながら遥か西方を見つめていた。


    【終】
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💕💞❤👍
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    明幸(日月)

    DONE(横)秀の字(&藤吉郎)と2人の少年の話。暗影篇終了〜旭光篇開始の間らへん(前作『殿からの褒美と近江の城』の続き)から始まるけど前作との繋がりはほとんど無し。夢路篇の台詞やバトルをはじめ色々と改変しているので注意。秀の字の性別は決まっていないけど身長は藤吉郎より頭1つ分以上高いイメージ。書きたい場面だけ書いたので話の内容が全体的にツギハギ気味かもしれない。※過去作再掲
    二本の青き槍 天正元年(一五七三年)。
     陽光をうつし輝く水面みなもをふたりは半刻ほど見つめていた。
    「…さて、茶屋でも寄って帰るか」
     やがてひとりは腰を上げ、いそいそと歩き出す。隣に座っていたもうひとりも立ち上がりそれに続く。

     琵琶湖。
     近江国の中心に存在する湖の名である。その規模は小国ひとつ分に匹敵し、内陸地に突如あらわれた海かと見まごうほどであった。
     ここから東に位置する今浜の町を長浜と改め、湖畔への築城を企てる新たな領主がふたり。
    「水門を作って、船で直接城に出入りできたら面白いと思わねえか?」
     軽い足取りで熱弁をふるうは藤吉郎。それを横目にもの言わず首を振るは秀千代。
     〝秀吉〟と称された、織田信長配下の武将たちである。
    7543

    明幸(日月)

    DONE(横)秀の字(&藤吉郎)と2人の少年の話。暗影篇終了〜旭光篇開始の間らへん(前作『殿からの褒美と近江の城』の続き)から始まるけど前作との繋がりはほとんど無し。夢路篇の台詞やバトルをはじめ色々と改変しているので注意。秀の字の性別は決まっていないけど身長は藤吉郎より頭1つ分以上高いイメージ。書きたい場面だけ書いたので話の内容が全体的にツギハギ気味かもしれない。※過去作再掲
    二本の青き槍 天正元年(一五七三年)。
     陽光をうつし輝く水面みなもをふたりは半刻ほど見つめていた。
    「…さて、茶屋でも寄って帰るか」
     やがてひとりは腰を上げ、いそいそと歩き出す。隣に座っていたもうひとりも立ち上がりそれに続く。

     琵琶湖。
     近江国の中心に存在する湖の名である。その規模は小国ひとつ分に匹敵し、内陸地に突如あらわれた海かと見まごうほどであった。
     ここから東に位置する今浜の町を長浜と改め、湖畔への築城を企てる新たな領主がふたり。
    「水門を作って、船で直接城に出入りできたら面白いと思わねえか?」
     軽い足取りで熱弁をふるうは藤吉郎。それを横目にもの言わず首を振るは秀千代。
     〝秀吉〟と称された、織田信長配下の武将たちである。
    7543