早寝早起きをした。宿題を忘れなかった。家事を沢山手伝った。通学中に人助けをした。かけっこで一番になった。テストで前回よりも良い点を取った。喧嘩をした妹にちゃんと謝った。たとえ結果が伴っていなくても、弟が何か努力をする度に、一生懸命な姿が可愛くて、人一倍褒めてきた記憶がある。
「おお、すごいな。偉いなぁ、ヒデは」
濡れた手を急いでエプロンで拭いてから、弟を抱き上げる。よくやったと額を合わせれば、誇らしげに瞳が輝いた。晴天の空のように澄んだ瞳が、もっともっと褒めてと訴えてくる。小さな唇が、踊る音符を次々と紡いでいく。
「頑張ったヒデオには、兄ちゃんが特別にちゅーしてやろうな」
そう言って、苺大福のような頬に口づけた。音符の数を増やし、弟はきゃっきゃと炭酸が弾けるような歓声を上げて喜んだ。素直な感情が嬉しくて、二回、三回とキスを続けた。
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