「どーじまくん、眠いんでしょ」
揶揄うような、それでいて子どもに言い聞かせるような声音で品田は目の前に座っている堂島を眺めた。本人から返答はなかったが、品田はさして気にしている素振りを見せなかった。来ないと分かってて声をかけたのだから、当たり前だ。
座り心地の良い椅子がギィと悲鳴をあげる。まぁ、眠くなるのも致し方ないだろうな、と品田はすっかり常連組となったニューセレナを見渡す。ちょうど良い空調と子守唄のようなBGM、まるで個室のように感じる薄暗い店内は美しいママをさらに魅力的に引き立てるのにひと役買っていた。店内を観察していた視線を元に戻して、今現在船を漕いでいる堂島が次の観察対象だ。
「…ほんと、嫌味ったらしいぐらいカッコイイよね、堂島くん」
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